山で採ったものだけを食べて暮らしてる人


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Keiryuonsen2007101001
(写真は、里兄ぃに教えてもらった、地元の秘湯)

 
 岐阜は板取という、山深いところにあるキャンプ場で、本物の山人に出会いました。

 名前は「里兄ぃ」。その日採れたものだけを食べて、何十年も暮らしています。
 歳は60~70歳くらい。顔は三船敏郎のようなイケメンで、昔は料理人だったそうです。奥さんと2人で、戦国時代に建てられた家に住んでいるとのこと。その家は重要文化財に指定されているため、手を入れることはできません。まだ囲炉裏やら土間やらがあるんだそうです。

 この人の話が、とにかく全然判らない。ファッション業界の人がIT業界の人の話を利いてもチンプンカンプンなように、僕がこの里兄ぃの話を聞いても、日本語だし言葉の意味はわかるんだけど、一体何を話しているんだか、まるでチンプンカンプンチンなのです。

 でも、判ると、僕が全く知らない自然に関する知識や知恵に満ちている、すごく面白いことを話しているんです。
 貴重だと思ったので、以下、覚えている限りのことを書き残しておこうと思います。
※雰囲気を出そうと思って、できるだけ里兄ぃの口調で、つまり方言っぽく書いているのですが、僕の記憶の中の方言なので、間違っているところもあるかもしれません……地元の方、ご容赦ください。

 

●鮎の話

「昔は、オレくらいの腕だと、友釣りでいくらでも鮎が連れたで。でも今は全然だわ。釣れると面白いけ釣れないとつまらないで、最近は鮎釣りに行かなくなった。

 鮎の習性が変わったんだわ。昔は鮎は「縄張り」をもっていて、そこに入ってくるものを攻撃していた。だから友釣りが有効だった。それに、鮎が連れてしまうと、すぐに別の鮎がその縄張りをとっていた。だから何週でもできた。

 今は違うんだわ。鮎が大人になっても集団行動している。縄張りをつくらない。時々縄張りを持っている鮎がいるで、そいつらは連れるでも、その鮎が連れちまうと他の鮎がその縄張りを取らんで、だからアッという間に連れなくなっちまうんだわ。

 鮎の習性が変わったんは、7年前くらいからだで。

 鮎は串に刺して焼いて頭からカブッと食べるんが一番美味いで。皿にもったその瞬間に味が落ちるんだわ」

 

●イノシシの話

「イノシシの肉は臭いっていうヤツがぎょうさんおるけど、それはちゃんと血抜きをしてないからだで。

 まず、狩で捕ったイノシシは不味いで。血が全身に回っちまうからの。でしとめてすぐに血抜きしたイノシシが最高だで。

 気候によっても変わるんだわ。雪が多くてあまりいいものを食ってないイノシシは、やっぱ味もそれなりだで。

 美味いイノシシは……本当に、あんだけ美味いもんはないっちゅーくらい、どえらい美味いで。七輪でジューッと焼いて、脂がしたたりおちているヤツをほおばると、あんまり美味くて美味くて、アッという間に1kgぐらい食っちまうで。

 モツも美味いで、美味いイノシシのモツを食っちまったら、他のモツは食えんで。
 でも洗うのが面倒でな……寒い冬に川に行って、ジャバジャバと血を洗い流さなくちゃいけないんだわ」

 

●キノコと山芋の話

「自然を相手に遊ぶのはほんと面白いで。

 たとえばキノコ。毎年生える場所が違うんだわ。
 去年は、急な山道を30分くらいズーッと上ってったら、目の前に、いーい香りの黒エノキがたーくさん。その隣には白エノキがたーくさん。
 結局段ボールに6箱くらい積めて帰ったんだわ。でも今年はそこには生えん。

 どうやって見つけるかって? そりゃもう足で稼ぐほかないわ。去年までの知識は一切役に立たんからの。今までの知識で当たりをつけていると、だーんだん見つけることができなくなってくるで、毎年真新しい気持ちで山に入ったほうがいいで。

 山芋は、岩だらけのところで採ったものの方が美味いで。
 肥えた土に生えてる山芋は、長いけど味はそれほどだで。岩が多いところの山芋は、小さいけど味が濃くて美味いで。
 ……ほら、あそこにも、あそこにも山芋がある(といってあちこちを指差す)。一度に全部は採れないけど、ツタが切れちまうと山芋がどこにあったかわかんなくなるで、見つけたらとりあえず印をつけとくんだわ。

 キノコも山芋も、7年くらい前からどんどん採れなくなってきてるで」

 

●山が全滅する話

(原生林の山の1つを指して)ほら、あそこの山、ところどころが紅葉してるようになっとるだろ?
 あれは、楢(なら)の木が虫にやられているところだで。7年位前から、今までこの辺りでみなかった草木や虫が増えてきたんだわ。
 一度あの虫がつきだしたらもう最後だで。あの山はあと2~3年のうちに、禿山になる」
 (ナウシカの話みたいだな、と思いました)

 

●貧しさの話

「「油そば」っていう地元の名物があるで。これは貧乏から出てきた食べ物なんだわ。

 蕎麦を油で煮て、その中にたまり醤油だとか野菜だとかをどんどん入れて煮込んでいく。普通蕎麦をそんな風に茹でたらすぐに伸びちまうけど、こういうやり方をすると、いつまで経っても蕎麦が伸びないんだわ。だから「煮込み蕎麦」ができるんだわ。これが油そば。

 他にも「○○もち(名前忘れた)」っていう餅は、この辺がみーんなどうしようもなく貧乏でもち米すら買えなかったころ、もち米半分、普通の米半分で作った餅が、名物になっていったんだわ。
 握り飯だって、米が高かったから、米半分、芋半分で作って「芋餅」にして、それを焼いて食ったんだわ(これはその後食べさせてもらいました。美味かったです)

 この辺はホントにどうしようもなく貧乏でな。ほんの7年くらい前まで、一番貧しかった村なんかは、市の役人が来て毎年ブシューッと薬品を撒いていってたんだわ。そいつらは家の軒下とかに住んでいてな。おまんらには想像もつかんだろうけど」

 
 
 ……他にも色々たくさん話してくださったのですが、僕が覚えているのはここまでです。無念……多少は雰囲気は伝わりましたでしょうか?

 興味深いのは、しきりに「最近、自然がガラッと変わっちまった」と言っていたこと。およそ7~8年ほど前から、山、魚、動物など、いろいろなことが急に変化して、山での生活がしづらくなったんだそうです。
 地球温暖化とかなんとかいう話を知らなくても、里兄ぃは、何か根本的な変化が起こりつつあると、肌で感じているようでした。生活に直結もしているので、なおさらですね。

 それにしても面白い話だったなあ。それに、こっちの目をジッと見て、一言一言僕らに彫り込むように話すんですよ。それも野性味があっていい感じでした。
 またぜひお会いしたいです。

 
 
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