「寿司」が西洋の料理界に与えた影響


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「レストランによく行くアメリカ人や英語圏の住人が、生の魚への本能的な警戒心を捨て、サシミやスシはうまいし食欲をそそるし、金を払って食べる価値があると判断した最初の瞬間に、西洋の料理学は大きく進展し、かつてなかったほど見事なまでに根本から私たちの生活を変えてしまった。

市場という観点から見ると、スシが広まったことでシェフ全員にとって景気が活性化した。
質のよいシーフードには時価の二倍を払ってもよいという日本人シェフが常に存在するようになったため、相場が急騰した。

さらに重要なのは、確実に客に売れそうな食材の選択肢が広がったことだ。
客がウナギやウニやトロやアン肝を食べたがるようになったため、フランス、イタリア、アメリカのシェフは、かつてならメニューにこっそり載せることすらできなかったような、脇に追いやられ、ほぼ忘れ去られていた伝統的な料理を客に提供できるようになった。

いまや、タコ、サバ、ヒメジ、新鮮なイワシといった、脂っぽかったり、骨が多かったり、くねくねしたりしているが、おいしい食材を自由に出せる。
これらの食材は、私たちがずっと大好きで、常に様々な料理の「原点」の本質を成していたものだ。

同時に重要なのは、シェフはスシを食べるのが好きだということだ。

スシが持つ風味の領域は、私たちが日々の仕事でどっぷりと浸かってきたものとは極めて異なっていた。
どれほど新鮮で質が良いかは、一目瞭然、陳列されているネタを見ればわかる。ごまかしや余計な演出がなくて、とても気持ちが良い。

ウェイターやフロアスタッフを一日中相手にした後のシェフは、もうこれ以上は人と接したくない。
寿司屋のカウンターなら、おいしいネタを親方に直接注文するだけで済むのだ。

また、生の魚を食べると、心地よく、さっぱりとして健康によさそうなたんぱく質からくる興奮を感じる。
それが、飲み過ぎがちな酒のどれともよく合って、私たちが選んできた様々なひどい生き方も、それほど悪くないと感じるようになるのだった。」

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アンソニー・ボーディンというシェフの本が好きです。
(IT業界の人には、去年のSXSWで講演してたシェフです、というと、通りがいいかもしれません。)

元々コックが厨房で大活躍する映画や本が好きなのですが、アンソニーのそれは格別に面白い。
人生経験が豊かすぎるほど豊かだし、文章がとても情感溢れててユーモアもたっぷりだし、飲食業会の裏も表も知り尽くしているしで、読んでて飽きません。

ニューヨークでの数十年に及ぶコック遍歴を書いた『キッチン・コンフィデンシャル』。

料理人の世界がいかにタフで、ワルで、大忙しで、乱暴で、ならず者で、繊細で知的で哲学的で芸術的で、そして美味しそうかを、自伝のような形で書いて、僕を、長編レビューを書かせるほどうっとりさせました。

NYのシェフによる、美味そうすぎてワルすぎる一冊『キッチン・コンフィデンシャル』 :小鳥ピヨピヨ

続く『世界を食いつくせ! キッチン・コンフィデンシャル・ワールド・エディション』。

アンソニーが厨房を飛び出して、世界の高級レストランから、コブラの心臓を生で丸呑みまで、ありとあらゆる美食珍食を食べ尽くすという旅行記です。これもまた面白い。抱腹絶倒です。アンソニーの自殺願望があるのかというくらいの冒険趣味と、いかにひどい目にあっているか、いかに素晴らしい目にあっているかを描写する豊かな文章力。最高です。

それらに比べると、『THE NASTY BITS―はみだしシェフの世界やけっぱち放浪記』はもの足りません。

アンソニーがあちこちに書き散らかした文章をまとめて本にした、いわゆる雑文集です。
確かに面白くはあるのですが、雑文集という性質上、書籍全体に通底するトーンというものがなく、全ての章がバラバラな印象で読みづらいです。村上春樹ですら雑文集は読みづらかったですからね。

でも、寿司に関する文章には感銘を受けました。
冒頭に載せたのは、寿司という、「生魚を米に載せてフィンガーサイズの食べ物にする」というアイディアについて、アンソニーなりに説明をしたものです。

「さっぱりとして 健康に良さそうな たんぱく質からくる 興奮」!
なんて美味しそう、そして、なんと官能的な表現なのでしょう。寿司を食べたくなっちゃいましたw

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