もうすぐ読み終わってしまって寂しいので、事前に書いておく『みみずくは黄昏に飛びたつ』感想(追記あり)


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良い本に出会うと、いつも発症する病気がある。『読むのを止める
』だ。
だって、もったいないじゃないですか。読み終わったら終わっちゃうじゃないですか。寂しいじゃないですか。その寂しさを埋めてくれる他の本なり映画なりなんなりに、すぐに出会える保証はないわけじゃないですか。

で、ただいま絶賛そのモードに突入しているのが、川上未映子による村上春樹へのインタビュー本『みみずくは黄昏に飛びたつ』。

ガチの村上春樹ファン、かつ本職の小説家である川上未映子が、村上春樹に聞きたかったこと、話したかったことを、全力を込めてぶつけまくっているこの本。僕が村上春樹に聞きたかったことが、村上春樹に言いたかった言い方で、北斗百烈拳のように浴びせかけられていて、良さの桜吹雪が舞うようでした。

「女性が性的な役割を担わされすぎていないか?」とか「それはマジですか?」とか聞いちゃんですよ? 川上未映子さん最高です。

過去作品や関連書籍の再読など、入念に事前準備をおこない、気合い充分で挑む川上未映子。
ラオウのごとき豪腕で切り開いたその先に見えるものは、一般的な「物書き」像とは全く違う、何も難解なことを考えていない、ほとんどバカみたいに見える村上春樹の姿。

「のれんに腕押し」という陳腐な表現が、まるで具体的な質量をもって感じられるかのように、川上未映子の渾身の一撃は、ことごとく宙を切る。
たとえば(楽しみにしている人のために、出し惜しみして)ひとつだけ例をあげると、先日出版された『騎士団長殺し』についての以下のやりとり。

川上:村上さん……あのですね、原稿を書いていて、イデアっていう単語を村上さんが打つ、こうやってキーボードで「イデア」。イデアってまあ有名な概念じゃないですか。そしたら当然、「ちょっとイデアについて調べておこう、整理しよう」みたいなこと、考えませんか?

村上:ぜんぜん考えない。

川上:それは本当ですか?

村上:うん。ほんとにそんなこと考えない。僕はただそれを「イデア」と名づけただけで、本当のイデアというか、プラトンのイデアとは無関係です。ただイデアという言葉を借りただけ。言葉の響きが好きだったから。

『騎士団長殺し』で重要な役割を担う「イデア」について質問するために、プラトンの『饗宴』と『国家』まで読み込んできた川上未映子の努力は、全て無に帰す。控えめに言って最高&最高です。

で、あまりに最高なので、1/6くらい読んでは「危ない! このままだと1日で読み終えちゃう!」と慌てて本を閉じ、また次の日ちょっとだけ読み、そうしてこの1週間すごしてまいりましたが、もう限界です。あと80ページくらいしかありません。絶対に今日中に読み終えちゃう。

なので、この本の紹介ではなく、この本に対する自分の気持ちを書き記しておくべく、こうしてキーボードを打っている次第です。

ここまで読んできて思うのは、小説というのは本当に(左脳的な意味で)難しく考えなくてもいいんだなあということです。言葉を使う以上、どうしても理性的な部分やロジカルな部分が目立ってしまいますが、小説という「物語り」フォーマットでは、実はそこは必須要素ではない。

村上春樹は抽象画家のように小説を書いているんだなあと思いました。抽象画家は、その絵画がどのような意味を持つのか、どのようなメッセージを込めているのか、(多くの場合)考えません。そういうのは観る側や批評する側に委ね、自分は線や色のみに集中します。

たとえばロバート・ライマンという画家の絵を見ると、白一色だったりしますが、恐ろしく丁寧に丹念に描きこまれているのがわかります。ただのっぺりと白を塗ったのとは真逆。主題よりも構成や筆使いを重視している。
村上春樹は、まるで抽象画家のように、頭に浮かぶ物語を端っこから捕まえて文章にし、その文章の表現力を徹底的に磨く。そこに意味やメッセージは込めない。

そんな風に考えると、「つじつまがよくわからないのに妙に惹きつけられる」という村上春樹の小説の魅力も説明しやすい気がします。
まあ、自我理性を無視してひたすらテキストを磨き上げることだけに集中にするのは、ストーリーを考えるより、はるかに難しいことだとは思うのですが。

さて、そろそろこの記事はこの辺で〆て、読書に入ります。
ああもったいないなあ。これ読み終わったら次どうしよう?

p.s.ところで村上春樹はEGWordを使って小説を書いているそうですよ。「これでしか小説が書けない」んだって! もう10年前に開発が終了したソフトなのに! 権利を持っている会社(コーエー?)は今すぐに最新のMaxOSとiOSに対応したEGWordを出すべきです。なんなら村上春樹100%監修で。

p.s.2.いま大詰めなんだけど川上未映子の最後の畳みかけがすごい。泣きながら「ありがとう!」と抱きしめたいくらいです。だって「でもさらに聞いちゃうと、これまでと現在を振り返って、「俺ってやっぱすごかったんだなー、とくべつだったんだなー」みたいな気持ち、ない? これはありますでしょ、少しくらい(笑)」ですよ!?

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