小鳥です。酔っ払っています。
今日飲みながら色んな人と話したことについて、軽く自分の意見なんぞを。
注:まじめ文章です。以下は興味のある方のみお読みください
最近、日本のカルチャーを担い、経済競争力の元となる存在としてのアニメに、再び注目が集まっています。ただ、そこには切込隊長BLOG ~俺様キングダム~ 「ポップカルチャー」で経済競争力伸ばせ?でも触れられているように、いくつかの問題もあるようです。
しかし……僕はそもそも、アニメを日本のカルチャーの中心として捕らえるという発想自体に、無理がある気がしています。
だって……アニメって、みなさん日常的に見てますか? 僕はほとんど見ないです。一番最近見たのは「千と千尋の神隠し」。今年は大友克洋の十年以上ぶりの新作「スチームボーイ」や押井守のいくつかの作品などがありますが、気になってるのはそのくらい。で、これらの作者たちって、もう10年以上もこの業界でトップな気がするんです。
その他、OVAやDVDや深夜番組の世界で話題になるようなものなどは、なんだか上記の大御所のコピーのような気がして、よほど気が向かないと意識を向ける気がしません。昔の作品のリメイクや続編ものもなんだか多いですね。
つまり、アニメの世界は、実は思ったより底が浅いんじゃないかと。上記の切込隊長BLOGの言葉を借りれば、
ちょっとだけ楽しむライトユーザー層を取り込めるメジャータイトルと、どっぷり漬かってマニアックに走る小口タイトルによって構成される両極端な産業構造
になってるんじゃないかと、そう思うんです。
また、昔からいる人ばかりが目立ってるような気がするのは、次世代の若手が思ったほど大量に育ってないってことなんじゃないかと、そう思うんです。
(アニメ好きなみなさん、ごめんなさい。ただ、アニメにどっぷり浸かってない人の意見として、聞いていただけると幸いです)。
じゃあ、アニメに代わるものはなんなのか。僕はそれを「マンガ」だと思います。
マンガは、大人も子供もみんな読んでいます。電車の中とかでもいい年したリーマンが平気で読んでいます。コミケなどで見られるように、マンガ家志望者の数も膨大。数年に1度は必ず大人気になる若手が現れます。
日本におけるマンガというカルチャーは、作り手の面から見ても底が厚く、読み手の面から見ても裾野が広い。日本の人々の生活にしっかりと根付いて、とても強力なのではないかと思うんです。
また、日本のマンガには、大人の読者を意識したものがたくさんある関係で、他国では見られないような、ストーリー的に質の高いものも多々あります。
欧州の一部では、カルト的な人気を博する大人向けマンガ作家がいるようですが、ここ日本では、それはカルト的名人気では終わらず、一般の大勢の人々に受け入れられます。
さらに、日本のマンガは、週刊誌という特異な形態でプロモーションされるため、読者は、日常的に「新しいマンガ」を試し読みするという習慣を持ちえています。これは、日本の他のジャンルのカルチャーが悩んでいる「人気のあるものは莫大に人気が出て、それ以外はチェックすらされない」という問題を、上手にクリアしています。この商習慣の結果、日本のマンガシーンには、「中堅どころ」が多数現れるという現象が発生しています。
日本のマンガカルチャーは無茶苦茶に底が厚いという予感が、僕はしています。だから、堂々と、これを日本のカルチャーの中心に据える、という発想があってもいいのではないかと思います。
ただ、「マンガを日本の代表的なカルチャーと位置づけ、これを世界に対してアピールする。これを活用して経済競争力を伸ばす」際、大きな問題が1つ横たわっていると考えています。それは、
海外の多くの国では、マンガは子供が読むものだという認識がある
という点です。これは大問題で、日本の良質な大人向けマンガのほとんどが、海外で競争力を持ち得ないという事実を示唆しています。
だから、日本のマンガを世界で展開する際は、今行われているような、「マンガをただ翻訳して書店に並べる」だけではダメなのではないかと思います。つまり、
「普通の大人が日常的にマンガを読む」という文化を、世界に根付かせる
必要があるのではないか、と思うのです。
これ、すごく難しいと思います。日本ですら、大人が堂々とマンガを読んでいることを公言できるようになったのは、つい最近だと記憶しています。ほんの10年ちょい前くらいまでは「大人のくせにマンガを読むなんて、頭が退化しているとしか思えない」とか言われていたはずです。
大人が公衆の面前で堂々とマンガを読み、マンガの話題がメディアに露出され、人々がマンガについて語り合う、そんな文化を世界に根付かせるには、相当の長い年月、相当国家戦略的に、事を進めなくてはいけません。
しかし……日本が国を挙げて大変な努力を払って、世界に「普通の大人も、子供と同じように、堂々とマンガを読む。そしてクリエイターは、堂々と大人向けのマンガを作る」というカルチャーを根付かせることができれば……そのときは、数十年かけて日本が国内に蓄積してきた、膨大なマンガのアーカイブと、マンガに人生を捧げている膨大な数の人材が、真の力を発揮しだします。ハリウッドのように、世界中から日本のマンガが堂々と注目され、各国語に翻訳され、外貨を稼ぎ出します。多くの才能が日本を模倣し、または日本に学びにくるでしょう。漫画家の地位も向上し、映画監督のようにセレブレティの扱いを受けるようになるかもしれません。もちろん、今まで以上に、面白いマンガが、しかも世界中で量産される可能性もあります。
次から次へと一般的に受け入れられる新しい才能が現れる、というわけではないアニメ業界や、既に多くの海外競合が生まれだしているゲーム業界と比べれば、「マンガ大国」日本という位置づけで世界にアピールするほうが、成功率が高いと思うのですが……どうなんですかねえ?