2003年夏の出来事。僕の友人が髪を切りに行ったときのこと。床屋の兄ちゃんが、急にこう言ってきたそうです。
床屋:「あのさ、インターネットって知ってる?」
僕の友人はIT系のプログラマーなのですが、インターネットが普及しきったかに見える今になって、急にインターネットって知ってるかと聞かれ、相当狼狽したそうです。彼は自分が何に巻き込まれたのかも判らないまま、適当に相槌を打ってました。
友人:「ええ、一応は……」
床屋:「あのさ、インターネットに出会い系ってのがあるんだよ。それを使うとさ、例えば北海道に住んでるヤツと沖縄に住んでるヤツが、会ったこともないのに仲良くなったりするんだぜ。それってヤバくね?」
ヤバいです。かなりヤバい人です。友人は怯えながら、次の言葉を待ちました。
床屋:「俺さ、最近、その出会い系を自分でやろうと思って」
友人:「はあ……」
床屋:「ところでキミさ、仕事なにやってんの?」
友人:「いや、そのインターネットの仕事を少し……」
床屋:「マジで!? じゃあ俺と一緒に、出会い系やらねえ?」
友人:「いえいえいえ! 今忙しいので、申し訳ないですが……」
辛くも最初の難関は乗り切った友人ですが、その後、恐るべき事態が待ち受けていました。
床屋:「俺さ、もうすっかりやる気だからさ、投資もはじめてるんだよ」
友人:「(投資!?)へぇ、そうですか……」
床屋:「あのさ、最近俺、IBMホームページビルダーってのを買ったんだけどさ」
友人:「(投資ってそれかよ!)ええ……」
床屋:「これ使ったら、出会い系作れるかな」
友人はこの時点で何が何だか判らなくなり、半泣きだったそうです。
IBMホームページビルダーは、単にホームページを作成するソフト。複雑なcgiやらphpやらDBやらが絡みそうな出会い系サイトなど、作れるはずがありません。いや、そういうことを発想すること自体が、既に友人の許容範囲を大幅に越えていました。
散々迷った挙句、友人はこう回答しました。
友人:「ええ、作れますよ……」
それ以来彼は、その床屋には行ってないそうです。
色んな人が、色んな夢を持って生きてますね。