あと数回続けさせてください。サンフランシスコ話。
さて、魔都サンフランシスコにて、斬新な呼び込み屋と出会いました。
呼び込み屋。小鳥ではもうお馴染みですね。見知らぬ人に話し掛け、その人の心を一瞬にして掠め取っていく、言葉の魔術師たちです。
【参考】
呼び込み屋たちの挽歌
呼び込み屋たちの挽歌2
呼び込み屋たちの挽歌3
彼らはまるで詩人のように、言葉に新しい意味を付加させていきます。その連想の豊かさよ! まるでアモーレの鐘が鳴り響くよう! 金色の牡牛たちが夜空を駆け巡るよう! カーテンが春風にそよぎ、それが海原の波となって愛しき君の心を洗うかのごとく……すみません、この辺まで来てしまうと、愉快なのは僕だけですね……
とにかく呼び込み屋は僕の心を捕らえて離さないわけですが、サンフランシスコでも、
---------------------
場所はイタリア地区。チャイナタウンから連続しているこの地域は、なんだか看板がケバケバしく、怪しげです。
ひょんなことからこの地区に迷い込んだ僕らを待ち受けていたのは、イタリア人の呼び込み。
ロン毛、マッチョ、刺青です。
既に酔っ払っていて、くつろぎながら呼び込みをしています。
そんな彼が、手すりにもたれかかりながら、僕に向かって、こう呼びかけました。
呼び込み屋:「ヘイ、プッシー」
あっしがですかい?
プッシー(pussy):あばずれ、子猫ちゃん、の意。
洋モノのHipHopとか聞いてると、日常語のようにこの単語が出てきますが、まさか自分がpussy扱いされる日が来るとは、思ってもみませんでした。
「そんなバカな!」と思って、思わずそいつを振り返ると、その不良はニヤリと笑って、親指で店の中を指差します。
ぜってー行かねー。
この呼び込み屋は、目的を達成するという意味では、まだまだ修行が足りないのかもしれませんね。