サンフランシスコでドライブの途中、意外だけど馴染み深い店を見つけました。
オルタナ系置物屋。僕はそう呼んでいます。庭に置く石像やらオブジェを売る店です。
日本でもこの種の店は、例えばこの辺のように、創造性が斜め上方向に発揮されてしまっている場合が少なくないですが、どうやら海を越えたここ西海岸でも、事情は同じなようです。
ただ、さすが洋物だけあって、和モノとはノリが違います。
例えばこの子供像↓
何ですか、この中間管理職のような疲れた笑顔は。可愛さのかけらもありません。
これ、ブロンズ像なんです。大きさは1mくらいかな。結構な存在感がある。
こんなもの庭にあったら、せっかくの一軒家が、陰気臭くなって仕方ありません。
絶対に売れないです。どうしてこんなものを庭に置きたくなるものかと……でもこっちのブロンズ像は、おしなべてこんな感じなんですよね……
例えば、これもそう↓
普通の子供のブロンズ像に見えますよね? 僕も油断してたんですよ。でも、近づいて表情をよく見てみたら……
もうね、最初からみんなを騙す気ですよこの子は。純真さのかけらもない。
心はすっかり嫌な大人ですよ。彼は子供なんかじゃない、子供という職業を演じてるだけなんです。
軽く目がイッちゃってるので、シンナーくらいやってるかもしれません。
可愛くないのは子供像だけではありません。例えば、日本人だったらどう間違っても絶対可愛く作っちゃうだろうと思われるこれ↓
お腹を上に向けて降参ポーズ、アライグマ、短い両手両足をピンと伸ばして……と、可愛いはずの要素が全部詰まっているはずなのに、どうしてもこうも可愛くないのか。
その秘密は、この動物の目にあると、僕は思ってます。明らかに無邪気以外の感情が、この獣の瞳には雇っています。相当打算的で、全てを計算ずくでやっているかのよう。
尻尾もフサフサ感ゼロで、芋虫みたいです。あの中には毒が詰まってるに違いありません。
動物といえば、こんなシリーズもあります↓
恐竜。何とかサウルスだと思いますが、正確に何サウルスなのかは、作者にとってはどうでもいいことなのでしょう。大事なのは迫力です。この店では、お客様が庭に置くことをためらうほどの迫力を備えてこそ、立派に売り物といえるようです。
ペガサス。いや、メカペガサスといった方がより雰囲気が伝わりますか。
善か悪かと言われたら、どう見ても悪の乗り物だと思えて仕方ありません。迂闊に子供とかが近づいたら、継ぎ目で指の1、2本は切り落とされてしまいそうです。
ゲッツ猿。あなたは、自分が旧吉本系の一発ギャグが大好きだということを、堂々と公言する勇気がありますか? もしおありなら、購入をオススメします。
ちなみに、後ろに見えるのは、デカ過ぎてフレームに収まりきれなかったゴリラです……それ以上何も言うことはありません……
……なんですかこれは?
僕の中に、喜怒哀楽のどれでもない感情が浮かび上がってきます。これは何? 諦め?
少なくとも購買欲ではなさそうです。
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まあこんな感じで、どれか1つでも置こうものなら、たちまちのうちに自分の庭がホーンテッド・マンションになってしまいそうな置物がズラリと並ぶこの店、全く何も買う気が起きなかったのですが……たった1つだけ、今思うと「あれは購買意欲だったのかも」と思えた商品がありましたので、紹介します。
なんて禍々しいんでしょう! これは子供?それとも子供の形をした妖怪? 柱に足を巻きつかせ、首を不自然に伸ばして、宙にいる何かを捕食しようとしています。その瞳孔は完全に開き、理性のかけらも煌かせません。
違う角度から見てみましょうか。
ムッチャ怖いです。こんなのに夜中つきまとわれたら、発狂してしまうかもしれません。
カメレオン・チャイルド。僕はこの子たちをそう名づけました。カメレオンを代表とする、爬虫類のように、僕ら人間とは永遠に判り合うことがない、しかし見た目だけは僕らに似た、そんな生命体。
この像の表情には、生理的な嫌悪感と恐怖感を感じます。まるで悪夢のよう。クトゥルフ神話に出てきそうなモチーフです。これだけ恐ろしげな雰囲気を醸し出すのは、そうそう易しいことではありません。
……そう考えると……これはもしかして傑作なのかも……
オルタナ系置物屋って、案外、世界各地にあるのかもしれませんね。そんな店を回る世界一周ツアーがあったら、ちょっと参加してみたい気がします。