エレベーターに
「あってもいいのになあ」
と思うボタンがあります。取り消しボタンです。
時々、「上に行くボタン」を押したつもりが間違って「下に行くボタン」を押してしまうことがあります。
そうすると、せっかくエレベーターが来て扉が開いても、乗らずに見過ごさなくてはいけません。
急いでいるときとか、イライラします。
なおかつ、そのエレベーターに人が乗ってたりすると、見知らぬ他人と、
「あ、お乗りにならないんですか?」
「いや、乗りません。とっととその扉を閉めて下に行っちゃってください」
みたいなやりとりを表情のみで行うという、バツが悪くかつ高度なコミュニケーションを取らなくてはなりません(そういうえばこういうシチュエーションんときに、実際に言葉をやりとりした記憶は、ほとんどありませんね)。
そんなとき、「取り消しボタン」があれば、間違った「下に行くボタンを押す」という行為を取り消して、優雅に「上に行くボタン」を押すことができます。
エレベーターに乗ったときだって同じです。5階に行きたいのに間違って3階とか押しちゃうと、急いでるのにのんびりと3階で止まってゆっくりと扉が開きやがります。
急いでるときとか、イライラします。思わずcloseボタンを連打したりします。
なおかつ、例えば上に行くエレベーターに乗ってて僕が間違って3階に止まるボタンを押して、3階で扉が開いたとき、たまたま偶然そこに下に行きたい人々が並んでいたりすると、僕は見知らぬ他人と、
「あれ? 僕は下に行きたいので上に行くエレベーターに乗るボタンは押してないのに、止まりましたね。どなたか降りられないんですか」
「うるせーなボタン押し間違えたんだよ。そんな目で見るなよ。とっとと閉めるぞ」
みたいなやりとりを、表情だけでやりとりする羽目に陥ります。
こんなときも「取り消しボタン」があれば、3階ボタンを取り消して、優雅に5階ボタンを押せばいいわけです。
うまくいくと、5階まで、どこにも止まらず直行でいけます。
関係ないですが、エレベーターに乗って目的階を押したとき、そこまでどこにも止まらずにたどり着くと、なかなか快感ですよね。テトリスで長い縦棒がスッポリと入って4列一気に消えたときと、似たような快感があります。
とにかく、このように、「取り消しボタン」には、様々な有用な使い道があるので、あっても良さそうなのですが、未だかつてそういったボタンがついているエレベーターには、お目にかかったことがありません。
まあ、便利だからという理由だけでゴチャゴチャとボタンを追加していくと、いつのまにやらMicrosoft Wordみたいに、
「どのボタンが何なんだかさっぱり判らない」
という状態に陥ってしまう危険性もあるとは思います。ユーザーインターフェースはできるだけシンプルな方がいいです。
エレベーターの設計をした人は、そういうバランス感覚を備えた方だったのかもしれないですね。うっすらとリスペクトを感じはじめました。