怖い夢を見ました。
どこか空き地で、夜、祭りをやっています。
側では僕の弟が、ガンガンに足を踏み鳴らして踊ってます。
僕の後ろには妻らしき人がいます。でもそれは本物の妻ではなく、僕の実の従姉妹のようでもあり、また何かの芸能人のようでもあります。ふと、さっきまで妻の胸元になかったものを見つけました。
小さな幼児の顔。そう、妻は、赤ちゃんを抱えていたのです。僕は驚き、尋ねました。
「え!? いつのまに生んだの?」妻はうつむき加減で微笑み、こう言いました。
「ええ、あなたの…が死んだから」僕には「弟が死んだから」と聞こえました。驚いて弟を見ると、さっきまで元気に踊っていた弟が、今ではぐったりと地に腰を下ろしています。
え!? 弟は死んだの!? いつの間に!? と驚いていると、妻が急に首を横に振って、クスクスと笑いました。「違うわ。弟さんじゃない」
続けて、妻は、こういいました。
「あなたが死んだから、この子が生まれたのよ」
あーっはっはっは、なーんだ、死んだのは僕か……っておい!
と突っ込みを入れながら、ガバリと目を覚ましました。汗をびっしょりかいていました。
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夢って不思議ですね。意味のないような映像なのに、明らかに感情に訴えかけてくる。
かつて、ノーベル賞候補にも挙がった失明の文学者ホルヘ・ルイス・ボルヘスは、現実と夢についてこう語ったといいます。
「現実では、物を見て感情が沸くが、夢では、感情が物を作る」(文献ど忘れ)
だから現実で見ればたわいのないもの(例えばちくわとか)でも、夢で見ると、すごく怖いものに見えたり、愉快なものに見えたりするのかな?
夢で「すごい面白いストーリーを思いついた」作家が、実際に紙に書いてみるとまるで面白くなかった理由も、こんなところにあるのかも知れません。
岩波書店 (1993/11)
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