こんにちは。GWはいかがでしたか?
僕は例の「5日間で絵が超上手くなる」ワークショップに参加してきました。
以下、詳細のレポートです。
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僕が受けたのは、「アート&ブレイン」の5日間連続のワークショップです。
まず、このワークショップについて、簡単に説明しますね。
小鳥ピヨピヨの人気記事の1つ、「「脳の右側で描け」のワークショップ」。
この記事内で紹介した書籍「脳の右側で描け」を書いたエドワーズ博士が、
日本で唯一公認しているのが、この「アート&ブレイン」です。
アート&ブレインは、エドワーズ博士の愛弟子である斉藤由江先生が主催/運営してます。
活動の主体は、「5デイ」と呼ばれる、年に3~4回開催されるワークショップです。
このワークショップで、受講生は、「脳の右側で描け」で紹介されているメソッドを5日間連続で学び、
5日目に自画像を描き、そのできばえに惚れ惚れする、という体験をします。
また、5デイには、絵の上達以外の様々な効果があります。
この5日間で行うのは、基本的には、普段の僕たちのモノの見方を壊し、新しいモノの見方を学ぶという作業です。
それは、脳の普段使っていないところを徹底的に刺激するということでもあります。
僕は3月で12年間働いたニフティを退職し、色々思うところがあり、
色々な意味で自分の頭をリセット&リフレッシュしたいと考えまして、
この5日間連続のワークショップを、10年ぶりに受けてみることにしました。
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場所は国立オリンピック記念青少年総合センター。
ここはGWの真っ最中でも人が少なく静かで落ち着いていて、
緑が多くて、建物も美術的に質が高く、とても良いところです。
僕はここに泊り込み、5日間、ドップリとワークショップに浸かりました。
お昼はずっと絵を描き、夜は先生や僕と同じ受講生たち、遊びに来たアート&ブレインの常連さんたちと、施設内のやたら眺めのいいレストランで食事。
部屋に戻って、ゆっくりお風呂に入ったりちょっと絵を描いてみたり。
完全に非日常な、特別な5日間でした。
さて、僕はこの5デイは10年前に受けたことがあるのですが……実は、そのときのことを、何一つ覚えていません(泣)。あの時は先生もアメリカ人で受講生も半分以上アメリカ人で授業は英語で、よく判らないところもあったし……
また、お絵かきも続けてないので、今や全然絵が下手な状態になっています。せいぜいこのくらいです。
また、この10年で、ワークショップ自体も大きく内容が変化し、より効果的に、そして楽しく楽に受講できるようになったようです。
以下、写真付きでざっと5日間のおさらいをしてみます。
● 1日目
この日のトピックは、「1ミリ1秒」というメソッドです。やり方はこうです。
対象だけを見て、紙は自分からは見えないところにセットします。
対象の好きなところを、目で1ミリ1秒で追いながら、目と手の動きを連動させて、目の動きと同じように手を動かします。
紙は見ないので、できあがりはゴチャゴチャとしたわけの判らないものになります。でもそれでOK。
これの重要ポイントは、「1ミリを1秒というゆっくりとした時間で見る」ということと「目と手の動きを連動させる」ということです。
これをやればやるほど、モノを細かく見ることができるようになり、また、見たままを描くことができるようになっていきます。
そしてこれが……普段忙しくしていて、モノを記号で捉えることに慣れきっている現代人には、とても難しい!
ただ慣れてくると、自分が対象にどんどんのめりこんでいって、瞑想しているような状態になり、気持ちいいです。
やる時間は7分くらいが適当かな? 僕は毎日寝る前に、石の表面の1ミリ1秒をやってました。
ちょっと不思議な話なのですが、これをやると、西洋人や中国人はイライラして脳が憤死しそうになり、日本人は眠くなるそうです。この違いは何なんでしょうね?
その他、この日は色々やりました。
「逆さまに描く」。
描いてるときは何が何だか判らないのですが、いざ出来上がってみると……けっこう良くできてません?
コツは、「ここは目」とか「ここは輪郭」とか思わないで、見たままを描くことです。
「3次元を2次元に落とす」。
ビューファインダーという小道具を使って、全体のバランスが崩れないようにしながら、細かいところにも注意して絵が描けるようにします。
● 左手で描く
ところで、僕は今回の5デイでは、絵を全て左手で描くことにしました。
理由は3つ。
- どうせ下手なのだから、右手で描いても左手で描いても同じ
- 左手だと線がヘロヘロになるので、必然的にゆっくりしか描けなくなる。見たものをそのまま描くのであれば、恐らくゆっくり見たままをなぞる左手の方が良いだろう
- 普段使わない神経を使うことで、より自分の頭に刺激を与えたい
やってみると、意外とすんなりと左手を使いこなすことができました。
もちろん思い通りにならずイライラしたり、線が明後日の方向に行ってしまうこともあったのですが……
……5デイが終わった今考えてみると、今回描いた絵が、全体的にバランスが崩れることが少なかったのは、もしかすると左手で描いていたおかげなのかもしれませんね。
みなさんもやってみてください。まずは1ミリ1秒を左手で。
意外とできますよ。
● 2日目
この日は、僕が一番楽しみにしていた日です。
やったのは「子供のときの絵を思い出す」。
とりあえずは「小さい頃描いてた絵」を思い出そうとしますが、記憶は芋づる式だし、特にルールもないので、次から次へと色々なことを思い出していきます。
「子供のとき描いてた絵って、こんな感じだっけ?」と無理やり思い出したようなつもりになって描いた1枚目から……
小さい頃のヒーローたちを思い出したり(ちなみに真ん中上はアイゼンボーグ。その左はテッカマン)……
小さい頃の自分の庭や公園の風景を思い出したり……
自分が小さい頃の親兄弟の記憶を思い出したり……
幼い頃よく見ていた夢を思い出したり(これは、片田舎のピエロが住む家で、親に置き去りにされるという、すごい夢の1シーン)……
最後は何やら色々なことを思い出しました(左上から横読みで順に、公園で食べたおにぎり、絵本の1コマ、井の頭植物園、小さい頃見たブドウ畑、家の庭にあった蟻の巣、井の頭動物園、レコードプレイヤー、すごい貧乏だった友だちの家)。
結局、30枚くらい描きました。
これの重要ポイントは「自分が、言語を使って世界を認識する以前の感覚を思い出す」というところです。
絵を描くときには、見たままの世界を受け入れることが重要だとのこと。
この「子供のころの絵を思い出す」は、結局この後、毎日夜に1人でやり続けてました。
もっと小さい頃、もっと小さい頃のことを思い出そうとして。
昔の記憶には、何やら大事なものが埋まっている気がします。
その他、この日は「ネガティブスペースを描く」というのをやりました。
椅子を写真のように無茶苦茶に積み上げて、その絵を描きます。
ただし、描くのは椅子ではなく、椅子と椅子の隙間にできている空間部分のみ。
出来上がりはこんな感じです。
線を描こうとすると、難しかったり、バランスを崩したりしますが、
このように空間部分を意識して描くと、複雑な造形もすんなり描けてしまうから不思議。
描いた絵は何かのパターンの一部のようにも見えるので、縮小コピーして色々な形に並べて遊んでみました。
たぶん何パターンでも作ることができると思います。
ネガティブスペースを描く練習をした後は、例えばこんな夕暮れ時みたいな絵は、さらさらと描けてしまいます。
● 3日目
この日は「角度は比率を測りながら描く」というのを学びました。
やり方を一通り聞いた後で、外に出て一日中お絵かき。
もちろん左手で。
屋外は絶望的です。
あまりにも複雑すぎて、とても描ける気になんかなりません。
例え描けたとしても1000時間くらいかかりそうです。
最初の1時間は、どうにもとっかかりがつかめず、一本も線を引けませんでした。
しかし、
「『楽しむ』を最優先に。楽しんでできるところから手をつける。そこだけしかできなくたって構わない。ちゃんとやろうとするから苦しくなる」
という斉藤先生の言葉を思い出し、とりあえずは手前の木から、ゆっくりと描きはじめました。
左手で、1ミリ1秒くらいのゆっくりさで、見たままを描くことを気をつけて、ネガティブスペースを意識して、時々バランスを測りながら、黙々と数時間。
最初は描いても描いても何が何だか判らなかったのが、ある時から急に形が浮かび上がってきて、できあがってみると……
「なんか上手くない!?」
ものすごくびっくりしました。知らない人がこの絵を見たら、
「絵の上手な人ねえ」
と思うでしょう。でも僕は、ちゃんと絵を描きはじめてまだ3日目くらいなのです。そして利き手じゃない方の手で描いているのです。
いやこの日はマジで驚きました。
他の受講生も、それぞれ自分に驚いて、喜んで、満足していました。1日目と2日目はうんうん唸ってただけの人も。
● 4日目
この日は「光と影を描く」というのを学びました。
色んな濃さの鉛筆と、練り消しゴムを使って、明暗を表現していきます。
このときも、明暗を表現しようなどとは思わず、見たままをそのまま描こうとするところがポイントです。
耳を描いてみました。
耳なんてどこにもとっかかりがない、身も蓋もない形をしているのですが、光と影だけを追って1時間くらい経つと……
なんか、「とても耳っぽい絵」が浮かび上がってきました。
ちょっと自分で描いたと思えないので、もう一度耳を描けと言われても、これだけ上手く描けるか自信が持てません(泣)。
それから、人物を描くときの、いくつかのコツを学びましたl。
例えば「頭頂からアゴまでの間のちょうど真ん中に目じりがある。そしてアゴから目じりまでと、目じりから耳の後ろまでの長さは同じ」など。
最初から比率で絵を描いてしまうとおかしくなってしまいますが、人物を描いていて「何かおかしいな」と思ったとき、とても参考になります。
その後は、人の横顔を描いてみました。
これもあまりにも複雑すぎて、最初の1時間くらいは何もできなかったのですが、
見えるところから、楽しんでできそうな部分から少しずつやっていくうちに、
2時間くらいで、このくらいまで描くことができました。
● 5日目
いよいよ最終日。緊張します……
この日は、恐れていた「自画像を描く」です。
自画像ですから、誤魔化しはききません。
しかも、人の顔は要素が多すぎます。
最初は「とてもムリ!」と思い、緊張して固くなってしまいました。
このままではできるものもできないと、小1時間くらい柔軟体操をしたり昼寝をしたりして過ごします。
その後、部屋に入り、深呼吸して、心静かに座り、
「『楽しむ』を最優先に。楽しんでできるところから手をつける。そこだけしかできなくたって構わない。全部できなくたって構わない。ちゃんとやろうとするから苦しくなる」
を思い出し、この4日間で学んだことをフル活用して、少しずつ描いていきいました……
最初は何の形にもなってないですが、少しずつ、何かが浮かび上がってきます。
でも気にせず、ひたすら見たままを紙に落とそうと、今描いているその部分にのみ、意識を集中します。
描きはじめて5時間経過。
なんか上手に描けたみたいです!
思ったよりずっと似てるし、似てる似てないはともかくとしても、陰影とか、線の感じとか、とてもよく描けてます! 特にえくぼの辺りとか。
リアルの僕と自画像の2ショット。
5時間に渡り、この笑顔をキープしたので、顔面が筋肉痛になりそうでしたよ……
リアルの方はもう目が死にそうになっています……
最後は、この5日間で描いた絵を全て壁に貼りだして、最後のフィードバック(「フィードバック」については後述)。
受講生の友だちとか、アート&ブレインの常連さんたちとかが大量にやってきて、ちょっとしたパーティみたいな賑わいになりました。
● 終わってみて……
とても楽しかったです。
5日間、頭の普段使わない部分を刺激し続け、手も普段使わない方を細かく動かし続けた結果、自分が変わったような気がしています。
何がどう変わったかは、これからゆっくりと身体に染み付いていくのでしょうが……とりあえず今は、なんだか妙に自分がゆっくりとした優しい人になったということ以外は、よく判りません。
「5デイ」が終わると、月に1度、フォローアップ目的で「1デイ」という、1日限定のクラスがあります。これは月によって「1枚30秒で描く」とか「植物を描く」みたいなものから「同じ方法論で英会話を学ぶ」とか「タイムマネジメント」とかまで、幅広い内容を扱っており、行きたいクラスがあればフラッと遊びに行く、というものです。また1デイから派生して、笛を習ったり、日本画を習ったりといった展開もあるようです。
いくつか1デイも受けてみようと思います。
さて、今回は、ワークショップ自体も良かったですが、一緒に受けた仲間がまた、良かったです。
今回は偶然にも、受講生全員がIT関連の人たち。
そもそも、貴重なGWを全部使ってワークショップを受けようなんて人はよほど高い敷居を越えてきた変わり者たちなので、何か特別な集まりであるのは当然そうなのでしょうが……
それにしても、話せば話すほど、偶然の一致やシンクロニシティがバンバンと起こるのは、なんだか不思議でした。
妙な縁のある仲間たちに感じたので、「フィードバック」のときも信頼感が生まれ、より積極的なフィードバックを行うことができた気がします。
そう、今回の5デイで一番すごいと思ったのは、「フィードバック」というやり方です。
この5デイでは、絵の説明や実際に絵を描く時間と同じくらい、絵を貼って、描いた人や他の受講生が感想を言い合うということに時間が費やされていました。
特に「描いてて何を感じましたか?」「どう思いましたか?」「何か気づいたことはありますか?」という点に。
そうすると……自分でも意外なほど、色んなことに気づくし、他の人からも、思いがけないメッセージをガンガンもらえたりします。
そして発言が発言を呼び、言葉が連想を生み……気がついたら、今回の場合は絵をとても上手に描けるようになったし、それ以上に、絵を描くのが楽しくなりました。
この「フィードバック」が、たぶん鍵ではないかと。こういうのは、5デイみたいな特別な場所じゃなくても、日常の中でも、もっともっと必要だな、と感じました。
この「フィードバックの時間をものすごく長く取る」という方法は、斉藤先生のオリジナルだそうです。
元々のエドワーズ博士のメソッドに対して、斉藤先生が自分の経験や世界中の脳学会/物理学会を飛び回って得た知識を使って、より改善された5デイ。
斉藤先生は、自身の絵描きとしての経験上、「何の訓練も受けていない人が、こんな短期間にこんなに上達するはずがない。これは一体何だ!?」と疑問を持ち、それ以来、様々な学会を駆け巡っては、この「脳のケモノ道的急成長」の秘密を探ろうとしているそうです。
この「脳の右側で描け」はベストセラーなせいか、類似品のワークショップが多数ありますが、本物は斉藤先生主催の「アート&ブレイン」なので、お間違えなきようお願いします。
次回の5デイは8月頭ごろだそうです。詳細は以下で聞いてください。
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モノをじっくりと細かく見るだけで、世界はとても楽しく驚きに満ちていることを改めて思い出した、そんな5日間でした。
※本ワークショップに興味のある方は、公式サイトがありますので、そちらをご覧ください。
脳の右側で描け
ベティ エドワーズ (著)
脳の右側で描けワークブック
ベティ エドワーズ (著)