小鳥ピヨピヨ

書きとめておきたい印象的な出来事を

人間関係のこじれを解決するのが得意な人

Iyashi2007021501


人間関係のこじれって本当にやっかい。
誰にとっても、難問のひとつではないかと思います。
だからこそ、それを解決するのが得意な人は、真の意味で「人生の達人」と言えるのではないでしょうか?

 

上の文章を書いてて、ちょっと「自己啓発くさい……」と思いましたが、書き直すのも面倒なので、このまま行きます。
今日は、僕が今まで出会った人類の中で、最も「人間関係のこじれを解決するのが得意な人」の話です。

 

------------------------------------

 
それは、以前働いていた会社の、上司でした。
仮にIさんとしておきます。
「家で大量の鳥を飼っているらしい」
という噂がちょっと気になってはいましたが、それ以外は、普段は別に魅力が溢れ出ている風ではない、ごく普通の人でした。

 

ところがIさんは、いざ人間関係がこじれそうになったり、実際にこじれちゃったりした状況に、めっぽう強かったんです。

 

誰も出たくないような会議や、小耳に挟んだだけでウンザリするような交渉ごとに、ホイホイと出かけて行っては、無傷で返ってきて、しかも理想形かどうかはともかく、なんとなくその問題は解決してしまっている。

 

そんな魔法のような出来事を次から次へと起こすので、僕たちの間では、彼はハリポタと呼ばれていました。

 

なぜIさんはそんなことができるのか。
その秘密を垣間見たような思いをしたことがあります。

 

そのとき、僕の取引先の人に、ある深刻な状況が発生していました。
僕と相手方とは、とある事業を一緒にスタートしようと、半年ほど準備をしていたのですが、先方の社内事情で、急に話が複雑化してしまっていたのです。

 

先方の担当者は、もはやノイローゼ寸前
いったいどうしたらいいのか、誰も解決策を見い出せない状態が続いていました。

 

そこで、Iさんが先方に出向くことになったのです。

 

僕は行きのタクシーの中で、Iさんに、今までの経緯と、先方の状況に対する予想をサマりました。
Iさんは腕を組んで目をつぶってその話を聞いていました。いかにも達人くさいたたずまいです。

 

僕の話を一通り聞いて、しばらく沈黙が流れた後、彼はおもむろに、こう言いました。

 

 

 

 

 

「よし、わかった。
では、彼らを癒しに行こう」

 

 

 

 

 

癒す!?
僕はそもそも、今まで会議や交渉事において、誰かを癒すという発想をしたことがありませんでした。

 

もう6~7年も前の話なのですが、いったい何が起きるんだろうと不思議に思いながら、
会議をはじめたのを覚えています。
議題は、現在の問題を解決するためのタスクを洗い出すことです。
会議は、長い長い彼らの資料説明からはじまり、それから、僕たちの発言の順番が回ってきました。

 

Iさんは、弛緩しきった様子で椅子にもたれかかり、完璧にリラックスしていました。
涎は垂れてはいませんでしたが、
目元にのみ、柔和な笑みが浮かんでいました。

 

そして、彼は、ゆっくりとした、どこにも力が入っていない、むしろ少し楽しそうな口調で、話しはじめました。

 

話の内容は、先方の改善案を受けたものではなく、このプロジェクト自体の中止を暗にほのめかすような、非常にセンシティブな内容でした。
それを彼は、あなた方のお辛い立場は痛いほど理解できる、とか、今は勇気を持つことが必要なとき、とか、お互いが最もハッピーになるにはどうしたらよいだろう、とか、そういう言葉を使って、柔らかい口調で語ったのです。
「説明」とか「主張」というより、「語り」に近い感じでした。

 

驚いたのは、相手の反応です。
今まで暗くて呼吸が浅く、軽くパニックに近い状態になっていた相手方の人々の顔が、
みるみる明るく輝き出したのです。

 

目にはうっすらと涙すら浮かべています。異常事態です。
Iさんの言葉が、よっぽど彼らの秘孔に届いたのでしょう。
帰り際には、彼らはビルの玄関前で、ケンシロウに助けてもらった小さな村の住人みたいに、いつまでも僕たちにありがとうを言い、頭を下げ、手を振り続けていました。
その顔は晴れやかで、愛と希望に満ち、会議前とはまるで別人のようでした。

 

---------------------------

 

辛い話をするときに、相手を癒そう、という心持ちで臨むと、思いがけないほど良い結果が出る場合があるのではないかと、そんなことを、僕は、この一件で学びました。

ま、実際には難しいですけどね。
相手が辛い状態のときは、自分も辛い状態になっているので。ええ、それは痛いほどわかりますとも。

ただ、もしかしたらこのようなモノの考え方が、どこかの誰かの問題を
改善するきっかけになるかもしれないと思ったので、紹介させていただきました。
Iさん、今ごろ何をしてるのかなー。

 

【Amazonで「BIRDSTORYのインコの飼い方図鑑」を見る】