ゲームじゃなくて実生活の方のセカンドライフに入った人が、
その人生を謳歌している話を聞くと、
なんだかこっちまで楽しく元気になってきます。
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先日、かつて世話になったとある人と、
久しぶりに飲んだのです。
歳は73歳。
髪は白くふさふさで、目も口も大きく、よく笑う、
野性味溢れるおじいさんです。
仮にYさんとしておきます。
Yさんは、僕の前の会社で、
僕の最終面接をした人でもありました。
だから僕はYさんに対して、あの就職氷河期に、
ダメ学生だった僕に社会人への入り口を開いてくれた、と、
勝手に恩義も感じています。
そのYさんのスイス旅行の話がとても素敵だったので、
ここで紹介します。
その旅をしたのは3~4年前。
期間は1ヶ月という長期間。
メンバーは奥さんと自分と、
それと大学時代のボート部の後輩。合計3人。
後輩の奥さんは既に故人となられていたそうです。
「期間が長いからさ、アルプスにアパートを借りたんだ。
オレは毎朝日の出前に起きて、
街を散歩してたんだよ。
まだ暗いからさ、シーンと静まり返ってるんだけど、
パン屋だけは開いてるんだよな。
だから俺は毎朝、朝食用にパンを買って帰るわけ。
後輩も、俺より少し遅いけど、
でも朝早くおきて街を散歩してたんだよ。
で、ヤツはケーキを買ってくるんだよ。
2人が散歩から帰ってきたら、
できたてホヤホヤのパンと、
買い置きしてある野菜やチーズで
奥さんに朝食を作ってもらって、
それを3人で食べるんだ。
それからはその日1日、
アルプスを散歩したり、どこか行ったりして夕方まで。
日が暮れるとまたアパートに戻って、
3人で夕食をとって、
それから、
後輩が朝に買って来たケーキを食べて、
ゆったりと夜を過ごしてたんだ」
なにその青春!?
すさまじく爽やかじゃない!?
爽やかな風が頬を撫でていきそうじゃない!?
「後輩は、
その旅行が相当良いというか楽というか、
楽しかったみたいだったよ。」
そりゃあ楽しかったでしょうよ。
「だから今年はさ、
イタリアを1ヶ月くらい旅しようと思うんだ。
ミラノからマルタまで、
1週間づつウィークリーマンションに泊まって。
メンツは、オレと奥とその後輩と、
あと今回は先輩夫婦も来るから、全部で5人だな」
映画のネタになりそうな話です。
豊かな旅だなあと、感心しました。
ところで、Yさんが定年を迎えた10年前は、
ものすごい大不況のド真ん中でした。
だから、Yさんの退職金はなんと60万円程度だったそうです。
なんか僕の感覚だと、
このくらいのお年の方の場合は、
退職金がセカンドライフにとって
とても重要なんじゃないかという気がするのですが、
でもYさんと見てると、
そんな、金なんて関係ないよ、と。なんとかなるんだよ、と、
それよりも興味深い計画を立てて実行に移したり、
日常の小さいことに目をとめたりして楽しもうよ、と、
そんなことを言われているような気になってきます。
団塊サードウェーブ―新しい大人文化が生まれる
博報堂エルダービジネス推進室 (著)