アメリカの人気ブロガーインタビュー、の第4回目(全5回)です。
今回紹介するのは「Overheard in New York」。ニューヨークで漏れ聞こえた会話を克明に記録しているという、超笑えて面白い盗み聞きサイトです。
こんなことを思いついて、実際に開設して長いこと運営してるなんて、どんなヤツなんだろう……個人的にもとても興味深いインタビューでした。
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ニューヨークのナンバーワン「立ち聞き屋」
「Overheard in New York(OhinNY)」は、とても独創的なブログだ。
運営者は30歳のモルガン・フリードマン(Morgan Friedman)。2003年のある日、ニューヨークはブルックリンのカフェで、彼はふと、スターとその彼女との会話をふと立ち聞きしてしまった。その内容にいたく共感した彼は、人の生の会話というのは記録するに値する価値があるのではないかと考えた。
彼は「OhinNY」を立ち上げ、5人の友人(フリードマンは彼らを「信頼のおけるスパイ」と呼んでいる)とニューヨークをくまなく歩き、会話の断片を集め、世界中に発信しはじめた。例えば「とある旅行客が警察に道を尋ねたところ、警察は『あの裸の中国人が見えるかい? 彼のところまで行って、それから左に曲がってくれ』と言った」といった会話だ。
OhinNYは今、2つの姉妹サイトを抱えている。「Overheard in the Office」と「Overheard at the Beach」だ。最初は5人だった協力者は、今や数百のメールでの「立ち聞き」のタレコミへと変貌している。
プロの立ち聞き屋になるというのは、どんな気分ですか?
楽しいよ。とりわけ楽しいのは、多くの人がこのブログを知っていて、このブログを通して僕のことを知ってるのに、誰も僕の見た目を知らないってことかな。
OhinNYは、何を目指しているのでしょうか?
まずは、OhinNYはユーモアのブログだってことだね。だからエンタティメントが目的。
同時に、これはちょっと説明しづらいんだけど、非常に興味深いことも起こりつつあると思っている。それは、「人が実際に話すことは、人が『人はこう話すだろう』と思っていることとは全然違う」ということ。実際の会話というのは、テレビドラマで使われるようなセリフとは全く違っていて、もっと不合理でむちゃくちゃなものなんだ。OhinNYは、本当に実社会で使われている会話、言葉遣い、文法や構文を書き留めている。だから面白いと同時に、人々の会話の生きた記録になっているんだ。
もしOhinNYが1906年にあったらどんな風だったか、ということを想像するとわかりやすいよ。このブログは、今この時にニューヨークを歩くという経験の再現になってると同時に、この時代の人々の生活が、実際にはどんな風だったのかを記録している。あなたの左でわけのわからないことをモグモグとつぶやいているのはユダヤ教ハシディーム派の人かもしれないし、あなたの右で携帯電話で話しているのは、アジアのスターかもしれない。そんな人たちの会話が同時に飛び込んでくるのが、この街なんだ。
あなたは、自分がプライバシーの境界線を越えてると思いますか?
簡単に言えばノーだ。けどもっとちゃんと言うと、このことについてはいつも考えている。
数時間前にOhinNYに「トム」についての投稿がポストされたんだ。僕がOhinNYにリンクしてくれたサイトをチェックしていたとき、トムが自分のブログで「OhinNYに載ってるこの会話をしたのは僕だ!」と書いてたことを知った。OhinNY側には「トム」という名前以外の一切の個人情報は書いてなかったんだけど、このOhinNYは今やとてもメジャーなサイトで、たとえ技術的に個人が特定できないよういろいろ工夫したとしても、どの会話が誰のものなのかを推測することはより簡単になってしまっている。
OhinNYに出るのは、テレビのリアリティ番組に出演するようなものなのかも。OhinNYに「出演」したいのかな……評価されていて嬉しいようでもあるけど奇妙でもあるよね。21世紀スタイルってことなのかな。
OhinNYは、ゴシップ系ブログだと思いますか? それともより社会問題を切る的なブログ?
OhinNYは、いかにも「ニューヨーク」風なゴシップブログだよ。もしこれがカリフォルニアだったら、たぶん有名人についてのブログになるだろうね。でもニューヨークの場合は、その辺を歩いている名も無き人々についてのゴシップブログになるんだ。
OhinNYは名も無き人々のゴシップブログということでいいと思う。自分の周りに実際にありそうなことを書くのが好きだし、そここそがOhinNYに溢れるユーモアの元だからね。
どんな人たちが読者層なのですか?
読者層と、記事に元になるような会話を実際にしている層は違ってるね。
読者の多くはヤッピーというか、都会的で洗練された人たちだよ。一方でOhinNYのネタ元になるような超面白い会話は、たいていはヤッピーじゃない人たち、特にホームレスの会話なことが多い。
素晴らしいネタは、ニューヨークで、経済状態に格差がある人たちが接したときに生まれるんだと思う。もしOHinLAなんてものがあったら退屈だろうね。登場人物はセレブだらけで、みんな車に乗ってるからふと出会うこともないし。でもニューヨークだったら、地下鉄のプラットフォームで、お金持ちのヤッピーと何やらブツブツ言ってるホームレスが隣り合わせになる事だってあるわけだし。どれだけお金があるかとか、出身や身分は何かなんて関係ない。どんな人だって隣にいる可能性があるんだ。OhinNYは、現実世界では全く何の接点も無いこれらの人たちを、超自然的な力で繋ぎ合わせる。最高の会話は、まさにこのこの交差点からやってくるんだと思うな。
(原文)
※逐次翻訳ではなく、編訳(超訳?意訳?)ですので、そのあたりあらかじめご容赦ください。
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……よく考えてみると、この「街中で耳や目に留まったおかしなものを記録する」って言うのは、この「小鳥ピヨピヨ」でもよくやってることですね……
もしかしたらOhinNYとウチは結構似た感性の持ち主なのかな……インタビューの内容もすごく素直に納得できたし……
誰か一緒に「Overheard in Tokyo」やりますか? いや、もっと絞った方がいいのかな……「Overheard in 秋葉原」「Overheard in 渋谷」「Overheard in 新宿」「Overheard in 吉祥寺」とか?
カンバセーション…盗聴…
出演: ジーン・ハックマン, ロバート・デュヴァル 監督: フランシス・F・コッポラ