(from ナイト・オン・ザ・プラネット。名作!)
聞こえてはいるんだけど、どうしても意味が頭に入ってこない日本語って、ありますか?
僕が今日乗り合わせたタクシーの運転手には、あるみたいなんですよね。
今日は非常に時間がタイトだったので、途中ちょっとタクシーを使わせていただきました。
特に何の考えもなく、目の前を走っていたタクシーを捕まえました。
タクシーは軽快にドアを開け、
運ちゃん:「どちらまで?」
と聞いてきます。僕は行き先を告げました。
僕:「道玄坂と246号がぶつかるところまで行ってください」
特に難しいことを言ったつもりはないんです。
でも……タクシーの運ちゃんが、返事をしないんです。
車も発車しません。
僕は不安になって、もう一度行き先を繰り返しました。
すると……
運ちゃん:「えぇっ? えぇっ? 246と……なに!?」
と、明らかに混乱しているんです。
あれ? 道玄坂って聞こえなかったのかな? と思って、もう一度繰り返しました。
僕:「あのですね、道玄坂と……」
運:「えぇっ!? えぇっ!? こどもの城のあるとこぉ!?」
僕:「それは宮益坂でしょ?」
運:「みみみ宮益坂……ああ、宮益坂ね」
急に運ちゃんのしゃべりが、シャッキリとしだしました。
運:「はい判りました! 宮益坂と246の交差点までですね? 行き方はどうしましょ? 今の時間だったら外苑東通りを……」
僕:「いや、僕が行きたいのは道玄坂と……」
運:「えぇっ!? えぇっ!? どぉうぐぅえん……?」
なにこの人(泣)?
道にも詳しそうで、仕事もできそうなのに、「道玄坂」と僕が言うと、急にアホになる。
悪い魔法使いに、「『道玄坂』という言葉を聞いたら頭が悪くなれ」という催眠術でもかけられたのでしょうか?
なんか怖いのですが、でも僕はどうしても道玄坂に行きたいので、一生懸命コミュニケーションを取りました。
以下、思い出せる限り正確に、テキストにおこしてみます。
僕:「渋谷の109、判りますよね?」
運:「ああはい、109ね」
僕:「その左側の道が道玄坂なんで」
運:「ど、ど、どぉうぐぅえん? えぇっ!? えぇっ!?」
僕:「……とにかく坂なんで、それを上りきると246にあたるんで」
運:「ああ、あの交差点でしょ? 宮益坂上」
僕:「いやそれは宮益坂にある交差点ですよね?」
運:「渋谷郵便局とかある、あの坂でしょ?」
僕:「それは宮益坂ですって」
運:「それと246がぶつかるところじゃあ……」
僕:「違います。それと駅を中心にして逆の坂」
運:「逆って……えーっと……」
僕:「ハチ公とかある方。あれが道玄坂なんですよ」
運:「えぇっ!? えぇっ!? どどどどぉうぐぅえん……!?」
埒があきません。
とにかく「道玄坂」という言葉を聞くと、不思議ちゃんモードになるみたいなんです。
仕方ないので、
僕:「246をまっすぐ行って、僕が言ったところで止まってください。そこが道玄坂ですから。」
とだけ伝えました。
運ちゃんは「はいよ!」と元気よく返事をして、車を発車させました。
細い道を細かく縫っていきます。どうやらこの辺の地理には相当詳しいみたいです。
一方通行から一方通行へと渡って、できるだけ最短距離を走って行き……
運:「はい、宮益坂上!」
道玄坂って言ってんだろ(号泣)!
いったいこれ何の呪い!?
頼むから道玄坂に連れて行っておくれよ!
僕いい子になるから!
ちゃんと痩せるから!
でももう面倒くさいので、宮益坂上でタクシーを降りて、歩いて坂を下ってハチ公前まで来て、また坂を上って目的地まで行きました……
目的地では、普通に会議が行われていました。僕がこんな異次元の苦労をしたとは、たぶん誰も気づいていなかったと思います。
ナイト・オン・ザ・プラネット
出演: ウィノナ・ライダー 監督: ジム・ジャームッシュ
p.s.なんか先日、少しの間、この記事用のメモと、仕事用のメモがここで公開されていたそうで……混乱させてしまい申し訳ありませんでした。