任天堂の岩田社長の発言は、いつも異常に「なるほど力」が高いように感じます。
「なるほど力」は今とっさに思いついた造語です。「相手を『なるほどぉ!』と思わせる力」という意味です。
岩田社長の「なるほど力」のレベルの高さと頻度は半端じゃない。
将棋の羽生を連想します。一言一言が常に最善手。次善の手すら滅多に打たない。
例えば、今回のアメリカのゲームショーで、大作の紹介ができなかったことを聞かれてのコメント。
「任天堂がコアゲーマーを無視しているのではないかという誤解がありますが、そのような誤解は解きたいと思っています。E3で『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』を期待していた方には申し訳なく思っています。いわゆる大作と呼ばれるタイトルは開発に時間もかかります。今回は見せるタイミングではなかったと判断しました」
また、iPhoneについて聞かれたときのコメント。
「実際に触ってみました。とても魅力的な製品です。ただ、慎重にiPhoneユーザーとDSユーザーを考えたときに、確かに被る部分はあるものの、そう大きいかと言うと、決してそうではないという結論になると思います」
凄みすら感じます。一字一句、まったくほころびが見えない。
毎日たった一言を思いつくのに四苦八苦している場末のブロガーからすると、うらやましくて仕方ありません。
どうしてこんなに言葉の魔術師なんでしょう?
僕の考えでは……たぶん……岩田社長は、「実感」として感じられること意外は決して言わず、なおかつその発言に対して、個人としてキッチリと最後まで責任を負う覚悟をしているんじゃないかと。
だから聞かれそうなことについて、事前に自分が実感として感じられるまで徹底的に考え抜くし、だから言葉に力強さが宿るんじゃないかと。
つまり岩田社長は、確かに大会社の代表取締役ですが、あくまでも「個人」として社会に対峙してるんじゃないかと。
会社と自分を重ね合わせることができ、かつ重ねてもブレないくらい強く太い個人を持っている、ということが、成功する企業のトップである条件かもしれないな、と思いました。
Wiiのすごい発想―任天堂 技術競争を捨てて-新しい市場開拓に成功
溝上 幸伸 (著)