彼女は、その会社ができてから採用された、初めての社員でした。
しかも新卒。当時(数年前)はつい最近まで女子大生。最初にそれを聞いたときは、
「いきなりピチピチの元女子大生を採用するとは、なんて心が汚れた大人なのだろう」
と思ったのですが……
どうやら心が汚れていたのは、僕の方だったみたいです。
彼女の仕事ぶりはすばらしく、僕は非常に大事なことを、彼女より教わりました。
みなさまの役に立つかもしれないので、ここに情報共有させていただきたいと思います。
yumiさんは、最初はそれこそワンハンドレッドパーセント普通の女子大生だったのですが……
会うたびに、どんどん別の顔ができていくのです。
元通りの可愛い女の子なのはそのままなのですが、もう1枚、急速に別の人格ができていっていたのです。
急速に形作られていたのは「信頼できるビジネスマン」という顔でした。いや女性だからビジネスウーマンか。
その信頼は、彼女が、「業界」と「関係者や顧客」に対して、誠実に接していたことから生まれたものでした。
まず「業界」について。yumiさんは、例えば僕が属するインターネット業界(ディレクション、マーケ)に対して、積極的に飛び込んでいって、一緒に面白がっていました。
そのシーンにいる人も、自分が属する業界がリスペクトされてると感じれば、悪い気がするはずがありません。なおかつ、彼女と同世代の女性で同じような人は、ほとんどいません。
勢い彼女はとても重宝され、いろいろな人から、いろいろなイベントや会合に誘われ、そして人脈を急速に拡大していきました。今現在彼女は、この狭いシーンの中では、同世代の中ではほぼ間違いなくダントツのネットワークを持っていると思います。
次に「関係者や顧客」に対して。yumiさんの、関係者に対する誠実さのレベルの高さを身をもって実感した一件があります。
ある日僕は彼女から頼まれ、とある製品のプロモーションに参加しました。
そのとき、僕は彼女の対応に、舌を巻きました。彼女はほぼ毎日、きめ細やかに、現状の報告やアフターフォローの連絡をくれたのです。
しかも定型文や決まり文句はほとんどゼロ。文体は丁寧かつ堅苦しくない文章。
そのイベント自体は、急遽決まって突貫工事的に運営されており、状況もクルクル変わるし、不明点も多すぎるといったイベントでした。普通に参加していたら、僕は不快感と不信感が溜まるだけだったでしょう。
しかし彼女から「報連相(報告、連絡、相談)」を頻繁に受けていたおかげで、僕は一切の不満を感じませんでした。
ところでそのイベントには、15人以上の一般人が参加していました。もし僕に対するのと同じような対応を他の人にもしていたとすると、彼女は通常業務やクライアントとのコミュニケーションに加え、15人以上の、それぞれ個性的な人たちと、頻繁に個別連絡を取り合いまくっていたことになります。
この2つに共通しているのは「誠実さ」と「リスペクト」です。
yumiさんは、特に専門性に長けたな技術を持っているわけではありません。しかし、自分が関わる業界に対して積極的に関わることで人脈を広げ、報連相を関係者全員に欠かさないことで信頼感を醸成しました。
それは、「次もあの人に仕事をお願いしたい」という、強烈なエネルギーを生んでいきました。
「誠実さ」と「リスペクト」は、「サイエンス」と「共感力」と言い換えても構いません。仕事が高いレベルで上手に回るためには、明快なロジックやデータの共有と、強い信頼関係が必要です。
もしかすると、この2つを合わせて、世間では「(仕事上での)コミュニケーション・スキル」と呼ぶのかもしれません。思うに、一部のギーク的な能力を必要とする職種を除けば、彼女が短期間で身につけたこの能力は、驚くべき汎用性を持つのではないでしょうか?
結果として彼女は今、恐らく転職のお誘いもひくてあまたでしょうし、そのサポートも豊富に得られている状態になっていると思います。現時点では、それだけの信用を彼女は手にしています。
たとえスキルや経験がなかったとしても、その業界やその業界で働く人にリスペクトを抱き、専門用語や業界の問題を積極的に学び、そして仕事をするときは報連相を、しかも全方位的に欠かさない。
どこに行ったとしても、それをやれば説得力を高め、共感を醸成し、キャリアを築くすることができるんだなーということを、僕は彼女から学びました。いやはや本当にありがとうございました。
そして、お疲れ様でした。まずはゆっくりとお休みくださいませ。僕が見た範囲内ですが、あなたが行ったその誠実さは、相当の体力と気力を酷使するものであったでしょうから。
休んだ後のご活躍を、心より祈念いたしております。敬具。
参考:ちょっと関係するかもしれない記事:ミキ姉ちゃんの就職活動と挫折とその後
p.s.彼女のようにネット業界でネットワークを広げたい、でもきっかけがつかめない、みたいな若い方は、連絡いただければ、何かのイベントがあった際には覚えていれば連絡します(約束はできませんが)。僕もそんなにたくさんのイベントを知ってるわけではありませんが……
わが息子よ、君はどう生きるか
フィリップ チェスターフィールド (著)