実践的じゃないけど、自分に新しい豊かさを与えてくれるような本を読んだりするのに、この5連休って最適だと思うんですよね。
もちろん視覚マーケティング実践講座もすばらしいのでオススメしますがwこれも、とてもいい本です。題名から想像する100倍は深いです。
パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則
江渡 浩一郎 (著)
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この本は、システム系の方にはお馴染みの、
- パターン(デザインパターン)
- XP(エクストリーム・プログラミング)
- Wiki
が、実は同じネタ元から出てきた兄弟で、しかもそのネタ元がコンピューター業界じゃなくて建築業界だ、ということを順を追って解説している「読み物」です。
とても文章が平易なので、素人でもスラスラ読めます。そういう意味では専門書ではありません。
さて、その「ネタ元」の名前はクリストファー・アレグザンダー。細部ははしょりますが、彼は従来の「建築家が最終的に設計内容を決めて、その後は設計図に従って作っていく」という建築手法ではなく、まるで長い営みの中で美しい農村ができていくように、利用者と建築家が一緒になって、相談しあいながら徐々に建物を組み上げていく、という概念を提唱した人です。
なお彼は、僕らにとっては、この
「IT業界におけるブランコの比喩」の元ネタとしても有名です(彼が思いついたジョークではないが、これは元々建築業界のジョーク。アレクサンダーが『オレゴン大学の実験』という自著で紹介した)。
アレクサンダーの提唱した概念は、あまりにも古くからある「建築業界」では受け入れられなかったけど、まだ真新しくて若々しい「ソフトウェア業界」に受け継がれ、ベックとカニンガムが「パターン」を生み出し、それが一方でXPに、もう一方でWikiに派生していったのだとか。
僕はプログラミングとか全然判りませんが……
この本を読んで、妙にワクワクしました。
たった1つのアイディアが、ジャンルの垣根を越えて、色々な人の想像力を刺激しながら、どんどん枝分かれして、進化し、広がっていく。
社会に出るとなかなか味わえない学際的な、知の冒険的なダイナミズムを感じます。
また、この本のサブタイトルである「時を越えた創造の原則」は、もしかするとそれが今まさに変わろうとしつつある、ということなんじゃないかとも思いました。「思った」というか、ピンと閃いたというか、予感がしたというか。不思議な感覚です。
ソフトウェアという、人類の歴史で最も若いグループに属するモノ作りジャンルの中で、全く新しい原理原則が生まれつつあるのかもしれません。
たぶんそれはアレグザンダーの言葉でいう「無名の質」と関連するもので、このネットの世界ではそれが「集合知」とか「グランズウェル」という言葉で生まれ変わろうとしているような気が…
それもダイナミックでワクワクしますね。
この本を読んだ後だと、自分がいつも身を浸しているIT業界が、ちょっといつもと違ったものに見えてくると思います。
ただ、1つだけ難を言うとすると……