以下、稲川淳二風にお読みください。
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あたし、先日、家族と国立新美術館に行ったんです。
母の作品が展示されているイベントがあったんで、田舎から出てきた祖母とそれを見に行こうと思いましてねえ。
ひと通り作品を見終わって、家族で雑談していたときのこと。
母の会話に「ミクロ菩薩」という言葉が混じってきたんです。
あれ~?
妙~に変だなぁ。
だってそうじゃない。ミクロは英語で菩薩は仏教用語だよ?
なんでその2つが混ざってるのかなぁ。
ミクロ菩薩なんて聞いたことがないけどなぁ。
小さい菩薩さまなのかなぁ。
ものすごく手先の細かい人が、虫眼鏡で見ながら彫ったのかなぁ。
ミクロっていうくらいだから、ものすごい小っちゃいんだろうなぁ。
どれだけ目を凝らしても、見えないかもしれないなあ。
小さいなぁ。
見づらいなぁ。
小さくて見づらいの嫌だなぁ。
嫌だなぁ。嫌だなぁ。嫌だなぁ。
あまり近づいて見ると、鼻息で飛んでいっちゃうかもしれないなぁ。
飛んでっちゃったら、もう見つけられないなあ。
失くしたら弁償しないといけないのかなぁ。
お金もったいないなぁ。
弁償するの怖いなぁ。
怖いなぁ。怖いなぁ。怖いなぁ。
と、そのとき、あたし……気づいちゃったんです。
あぁ、母が言いたかったのは、ミクロ菩薩じゃなくて、きっと、