何の気なしに読んでみたら意外と面白かったので、簡単に紹介。
異次元の刻印(上)-人類史の裂け目あるいは宗教の起源
グラハム・ハンコック (著), 川瀬勝 (翻訳)
ハンコックと言えば、漫画の設定でも出てこないような、独創的で突拍子もないトンデモを大真面目に語る第一人者。代表的著作は、超古代文明ブームのさきがけとなった「神々の指紋」。
今回の本は、超古代文明以外のことがテーマです。
そのテーマとは……あまりにも突拍子もないことで、MMR風に言うと3行に1回くらいは、
という状態になるのですが、できるだけシンプルに、短く解説してみます……
「今の形の人類ができてから500万年。高度に抽象的な概念を取り扱う痕跡が見受けられるのは、約4万年前から。
いったい4万年前に、人類に何が起きたのか。神経学的には特に変化がないはずなのに、どうして突然進化をはじめたのか。」
うん。この疑問は至極もっともですね。
興味をそそられます。
「ラスコーの壁画など、古代の芸術をつぶさに観察すると、そこにはシャーマンや南米のインディオなどが幻覚剤を摂取して語るビジョンと非常に似通った描写が繰り返し出てくる。
古代の人は、たまたま幻覚を誘発するキノコなどを食べたときの強烈な体験を、壁画に記したのではないか。」
まあ、これもありえそうではあります。
「幻覚とは何なのか。本当に単なる脳のシナプスの異常に過ぎないのか。
そもそも、なぜ我々の脳は、特定の化学物質で幻覚を見るような構造になっているのか。」
確かに、なぜでしょうね……
ちなみに幻覚は、犬や虫でも見ることが確認されてるそうです。
「もしかすると、脳とは単なる受信機であり、幻覚剤はそのチューニングを変える役割を果たしているのではないか。
つまり、幻覚を見ている人が見ている幻覚は、幻覚ではなく、現実なのではないのか。」
ついてきてますか? こっからがハンコックの真骨頂ですからね。振り落とされないようにしてくださいね。
「幻覚を見ているときに見ているものが現実だとすると、それは何なのか。
1つの可能性は、それが『異次元』だということだ。我々の世界と重なり合っているけど通常の脳の状態だと見えない世界を、幻覚剤はチューニングを変えることで一時的にアクセス可能にしているのではないか。
もう1つの可能性は『DNA』。DNA全体の90~97%と言われる、何のためにあるのか判らないジャンクDNAは、実はDNAを作ってこの地球に落とした超高度文明を有する宇宙人または異次元人からのメッセージが書き込まれている巻物であり、幻覚剤はその巻き物へアクセスするための手段ではないのか。
そして4万年前、異次元の存在または巻物のプログラムが、人類が進化の準備が整ったと判断し、幻覚剤でこちらにアクセス可能になっている脳に対して、いっせいに医療、農業、文明などの知識を教えはじめたのではないか」
来ましたね。
僕らは異次元人または宇宙人から全てを教えられていて、しかもそれは幻覚剤で完璧にラリッている人しか受け取れないんですよ。
ところで著書では、この説を裏付ける数々の臨床実験の結果を、本全体の2/3くらいの分量を割いて説明しています。
その中にはDNAの二重螺旋構造を解き明かしたノーベル賞学者フランシス・クリックの著書などもでてきていて、読み込むとそれはそれで面白いのですが、何しろ量が多すぎるので、途中で懐疑派も支持派もウンザリすること請け合いです。
逆に言うと、この本を読むときのコツは、この証拠を並べてる部分を「はいはい判りました。それで?」と読み飛ばすことです。そうすればこの上下巻のブ厚い本の半分くらいは小飼弾さん並の速度で読み飛ばせます。。
「このような説を唱える学者や、私のようなジャーナリストは、主流派の学会からは無視されるか、目の敵にされる。
しかし彼らは、幻覚剤を飲んでない。飲んでないのにどうして否定できるんだ。
私は違う。古今東西の幻覚剤を、それこそ南米のインディオの秘薬から科学合成物にいたるまで食いまくって、実際に体験してやるんだ。」
そして彼は、いざというときのための医師や妻や子供の監視の下、さまざまな幻覚剤を試し、そのレポートを克明に著書に記します。
ここまでくると天晴としか言いようがありません。
確かにトンデモなんだけど、これだけ大真面目にやられると、ちゃんとエンタティメントになっている気がして爽快です。信じる信じないを脇における人は楽しめると思います。
ところで、こういう徹底した調査の元で書かれるブ厚いけど面白い本って、日本にはあまりない気がするんですよね。出版社の体制の違いの問題なのかな(出版社が長い年月の取材執筆活動を経済的に支える体制など)。
なお、ハンコック氏の最新作は小説だそうです。
彼が取り扱う題材を考えると、そっちに転向したほうが、確かに良さそうではありますね。