事情があって逗子に1週間ほど住んでいたのですが、逗子らしいことをやる時間がなかったので、15分くらいだけ寄り道をして、小さな立ち食い寿司屋に入りました。
寿司屋の名前は「いなせ」。老夫婦が営んでいる、古くて清潔なお店です。
4人も入ればいっぱいになってしまうような店内には、親子連れらしい、20代と50代の女性2人組がいました。
親子連れは、どうやら久しぶりに実家へ帰ってきたらしい娘を、母が歓迎する、というひとときな様子。
娘さんは、友だちとの飲み会のように、よくしゃべり、笑い、このお寿司美味しいと舌鼓をうっています。
お母さんの方も、それに合わせて友だちのように振舞っていますが、その瞳には、単にお寿司と会話を楽しんでいるのではない、深い柔らかさがたたえられているように見えます。
たぶんお母さんは、魅力的になった大人の女性である娘を通して、赤ちゃんでママにベッタリ甘えてた頃の彼女を思い出しているのだろうなあ、と思いました。
でもそんなそぶりを見せたら、年頃の娘にキモがられるので、気丈に友だち風に振る舞うお母さん。
そして、なんとなくその空気に気づいてはいるけど、寿司が美味しすぎてテンション上がっててその空気が気にならない娘さん。
そんな空気を壊さないように、会話や食べものに気を遣う店の主人。
和やかな中にアルデンテのように微妙な緊張感が漂う、そんな逗子の夜でした。
こんなところで食べものの写真を撮るのはあまりにも目立ちすぎてキモくて恥ずいので無理だったのですが、ものすごく美味いものがあったので、それだけ断って静かに撮影させていただきました……
「牡蠣汁に一晩漬け込んだ牡蠣の寿司」と「じっくり煮込んだラフテー」です。もし「いなせ」に行くことがあったら、頼んでみてください。
(iPhoneより)