遠山郷という長野の限界集落にある、木沢小学校跡地(今は記念館)に行ったんです。
なんと言いますか、別に僕の故郷でも何でもないのですが、郷愁としか言いようのないような切ないかつ温かい感じでした。
下手ですがそのとき撮ってきた写真はこちら。
で、あちこち見て周っていたのですが、とある教室に、当時の児童が書き残したという絵本が飾ってありまして。
なんの気なしに開いてみたら、こんなお話だったんです。
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むかし小さな家に、ゆう子という可愛い女の子が、お父さんと二人きりで住んでいました。
そのゆう子という女の子は小さなオルガンを持っていて、毎日そのオルガンをひいていました。
ゆう子はお父さんが木を切りに行っている時も、ひいていました。
ある日、ゆう子が寝て一時間ほどたった時、オルガンが、静かに鳴りだしました。
オルガンは、子もり唄のような曲をひいていました。
その曲が鳴ると、おもちゃが動き出しました。
そして朝がきてゆう子が目を覚ますと、おもちゃがちらばっていました。
ゆう子は「どうしたんだろう」と言いながら、片付けました。
これは夢ではなかったのでしょうか。
そのオルガンは毎日ちらばっていました。
おもちゃも毎日ちらばっていました。
それでゆう子は、なぜそうなるのか、一晩中起きていることにしました。
しかし、その晩は、何も起きませんでした。
なぜでしょう。
ゆう子は一晩中起きていたので、倒れてしまいました。
お医者様は「ゆっくり寝かしておくと治るよ。」と言ったので、ゆっくり寝かしておきました。
次の朝ゆう子は、病気が治ったので、オルガンをひこうとしました。
でも鳴りません。
どうしてならないのでしょう。
それは一晩中鳴らし続けたので、壊れてしまったのです。
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なんだろうこの静かな恐怖。
人間のフリをしている人外の何かと相対しているような、あるいは村上春樹の『1Q84』のように、自分の世界そっくりなんだけど何か根本的なところが全く異なる、別の世界に迷い込んでしまった(しかも出口がわからない)かのような、そんな類の幻想的な怖さを感じます。
夕暮れの廃校で一人で読んだせいかもしれません……
でも、これを見ても、全然怖いと思わない人もいると思うんですよね。
一方で、確かに怖さを感じる人、
背筋がゾクッとする人、
あるいは言いようのない不安定感を感じる人、
そういう人もいると思います。
後者に属する方。
「怖い」と思ってしまったあなた。
そう感じたのは……
なぜでしょう。
1Q84 1-3巻セット
村上 春樹 (著)