このたび6人目の内閣官房参与となると発表された、田坂広志博士。
社会起業家論を専門とする、シンクタンク経営者/哲学者です。
ニュースでは「工学博士だから原発対策で助言」とありますが、何しろ哲学者だし詩的な方なので、実際にはより広範囲なトピックスについて話をするものと思われます。
さて、その田坂さんは、このたびの3.11について、どのような考えを持っているのでしょうか。
同氏が、今回の震災に寄せて行った講演の音声とパワポが、以下に置いてありました。
(以下、ときどき現れる「たまにはまじめピヨピヨ」なので、興味のある方のみご覧くださいませ)
いま、あなたに何ができるのか ― すべての人が社会に貢献できる生き方・働き方
内容についての判断は個々人で異なるでしょうし、正直に言うと個人的には「それは言うべきではない」と思う部分もあるのですが、一箇所とても共感したところがありました。
以下の箇所です。
いま、我々が為すべきことは、何か。
為すべきことは、ただ一つ。
目の前の仕事。
その仕事に、深い使命感を抱き、高き志を重ね、心を込めて取り組むこと。
その、日々の仕事を通じて、素晴らしい日本を作る。
今、大震災を目の前にして、無力感を感じていたり、自分の人生やしていることに意義を感じなくなったり、疲れたり、それこそスピッツのボーカルみたいに倒れてしまう方などもいらっしゃると思います。
何ができるのか。
何をすべきなのか。
これまでは、日本全体が、何となく漠然と無気力になり不安を感じて、自分探しをし、無為に時が過ぎていくように感じていたのですが(もちろん個々人を見れば差がある)、それが、このたびの震災や、あるいは前の天災、領土などの外交問題、国際的な金融危機などなどで、ハッと我にかえるといった状況が、毎年のように繰り返し目の前に立ち現れてきているように見えて仕方ありません。
変わるように促されている。
具体的で粘り強い、かつスピーディなアクションが求められています。
でも、何をどうしたらいいかわからない……と悩んでいる方に、この田坂さんの言葉は道を照らす光になると思うのです。
つまり、目の前にあることをやる。
仕事という意味だけではなく、目の前にあるできること、やることをやる。
ただやるのではなく、心を込める。
今までよりも高い志と意識を加える。
大げさに言えば、たとえそれが呼吸とか食事だったりしても、ちょとっとネットに何かを書くだけだったとしても、単に個人的な楽しみで行うことでも、できるだけ一瞬一瞬を意識して、そこに心を込める。
すると、やっていることは同じでも、そこに「質」が加わる。
質が高まっていけば、一つ一つの行いがもたらす結果も、変わってくる。
このことは、別の言い方でも、いろいろ言えます。
『七つの習慣』でいうところの「影響の輪」に集中すると言うことでもあるし、先日放送された金八先生の最後のスピーチの言葉を借りれば「一隅を照らす光になる」ということでもあります。仏教や一部哲学だと「今という瞬間に生きる」も似た意味です。
ネットやメディア、または周囲の言動に左右されず、自分の足下の行いや言葉に心を込める。
それが積もり積もれば、今は不可能に思えることの多くが、実現可能になるのだろうと信じています。
そして、そういうことを意識している人が内閣の官房参与になるのは、良い知らせだと思うのです。
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ところで、田坂さんとは、2003年末か2004年の頭に、当時ニフティの社長だった古河さんのご好意で、一度お会いして、当時広がりはじめたばかりの「ブログ」について紹介させていただいたことがあります。
そのときは僕に準備の時間がなかったり緊張してたりしていたこともあり、それほど深い話はできなかったのですが、それ以来ときどき著作を読んでいます。
すごいマクロとすごいミクロを同時に見ているような、非常に独特な視点をお持ちの方だと思います。
TEDxTokyoで行った詩の朗読も非常にユニークなものでした。端的に言うと、これからの日本と世界は、今までのような「野蛮な資本主義」から、現代では慣用句になっている「三人寄れば文殊の智恵」「お陰さま」「恥を知る」「一期一会」「おもてなしの心」などの言葉に現れる「昔ながらの叡智」を資本とする社会に生まれ変わらなくてはならない、という話なのですが、童話と言うかなんというか、不思議なポエムになっています。
こちらに日本語訳の動画があるので、興味がある方はご覧になってみてください。
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被災に遭われたみなさまの平穏を、心よりお祈り申し上げます。
仕事の思想—なぜ我々は働くのか
田坂 広志 (著)