突拍子もないアイディアを聞くのが好きです。笑っちゃって、でも腹の底から元気がわいてきます。
もう1年くらいずっとリンクだけとっておいた、ゲームデザイナージェーン・マゴニガルによるTEDトークの動画をようやく観たのですが……まあこれが突拍子もないんですよ。
これです↓
ジェーン・マゴニガル
「ゲームで築くより良い世界」
(アクセスすると英語になっちゃう人は、動画下の「Subtitles Available in:」というところで「Japanese」を選んでください)
とりあえずぜひ上の動画を見てみてください。なんだか不思議なテンションで、面白くて頭のいろいろなところが刺激されますから。
以下僕の感想。
彼女の主張はこうです。
「世界を救うために、人類は週に210億時間オンラインゲームをしなくてはならない」
……何を言ってるのかさっぱりわからないと思いますが、現在、世界中の人々がオンラインゲームに費やしている時間は、合計で30億時間/週だそうで、彼女の計算では、それを2020年までに210億時間/週にできれば、人類は様々な問題を解決し自らと地球を救うことができるんだとのこと。
笑っている聴衆に対して、彼女はこのことを納得させようと、雄弁に語りだします。
その話の、まあ上手なこと。「確かにその視点から考えたことはなかったわ」「言われてみると確かにそうかも」という奇抜さと説得力に満ちています。
彼女はゲーマーのゲーム中の特徴を、こんな風に表現しています。
ゲームの世界にいるとき、
最高のバージョンの自分が現れるのです。
即座に助けに駆けつけ、
問題の解決に粘り強く取り組み、
失敗しても立ち上がって再び立ち向かいます。
現実の人生では、
失敗に直面したり、障害にぶつかったときに
なかなかそのようには感じません。
圧倒され、打ちひしがれたように感じます。
不安になり、あるいは落ち込み、苛立って、悲観的になります。
ゲームでは、そのように感じません。
そんなもの、ゲームには存在しないのです。
確かに僕らは、ゲームの中では、積極的に苦難や困難、チャレンジを受け入れ、リスクをとって冒険し、失敗してもめげずに再トライします。
しかし現実では、不安に萎縮し、境遇に嘆き、なかなかゲームの中のようには振る舞えません。
「達成できないことなどない」と信じ、仲間と協力して、前向きに粘り強く問題と取り組む、このオンラインゲームでの感覚を、どうしたら現実の世界に適用できるのでしょう。
社会システムを、再挑戦を歓迎し、取り組みに対する賞罰のバランスがもっと調節されたものに変えればいい、というレベルの問題なのでしょうか?
それとも、もっと全人類がクリエイティブに取り組むことができる課題なのでしょうか?
あるいは1人1人の心の問題なのでしょうか?
一つの可能性は、彼女がTEDの中で言っているように、「我々は、現実をもっとゲームのようにする必要がある」ということだと思います。ソロプレイが好きな人もパーティプレイが好きな人も、それぞれのレベルに応じて、ゲーム的テンションで活躍できるように。
なんだかそれって楽しそうですし! このプレゼン自体、「ゲームで培われる能力にだっていいものはある」みたいな言い方ではなく「世界を救う」みたいな大上段に構えちゃってるところ、ゲームっぽいですよね。狙ってやってると思います。
ゲームって、特にコンピューターゲームって、ずっと単なる娯楽で基本的には時間の無駄だと思われていたし、一方では「人生なんてゲームに過ぎない」というハードボイルドでマッチョな人も時々はいますが、そのどちらでもなく、ゲームを極限までポジティブにとらえる、最高にクリエイティブで刺激的なプレゼンでした。
プレゼンターのジェーン自身も、そのたたずまい、表情、ジェスチャーが、いちいちゲームっぽいんですよね。その辺の軽さも素敵でした。
任天堂の岩田さんや宮本さんに観てもらって、感想を聞いてみたいなあ。
ゲーム脳の恐怖
森 昭雄 (著)
Reality Is Broken: Why Games Make Us Better and How They Can Change the World
Jane McGonigal