『拳児』という漫画の中の、八卦掌を修行中の主人公が別の拳法を学ぶよう言われたシーンで、こんなやりとりがあります。
「まだ八卦掌もちゃんとできないのに、さらに別の拳法まで体得できるのか自信がありません。」
「身体の中を通すだけでよいといっただろう。必要なものは必ず身体の中に残るものだ」
フランスに行くために、10日間ほど突貫工事的にフランス語の勉強をして、僕はこの拳児の言葉を強く感じました。
語学って、「理解して、覚えて、次に進む」という勉強の仕方をすると、挫折しやすいのかな、と思います。
理屈じゃない部分が多いし、たった1つの文章を言うだけでも、発音、単語、活用、文法、構造、などなど、あまりにも多岐にわたることを気にしないといけないし。
そもそも僕たちは、赤ちゃん時代、母国語を覚えるときはそういう覚え方をしていないし。
文法やら効率のいいマスターの仕方やらは一切無視して、ひたすら聞いて、真似して、反応を見て……を繰り返していました。たぶん。覚えてないけど。
でも、外国語を学ぶときは、どうしてもお勉強的なスタイルで、順番にやっていこうとしてしまいます。
まずアルファベットを覚えて、「これはペンです」的なことを言えるようになって、数の数え方を覚えて、云々……
すると、進めば進むほど、以前やったことを忘れてしまい、戻って理解し覚え直して……を繰り返すうちに、雪だるま式に復習しなければいけない項目が増えていき、その膨大な量に圧倒され面倒くさくなって、足が遠のいてしまう。
この繰り返しで、外国語学習に失敗し続けてきたのかな、という反省が、僕の中にありました。
だから今回は、たった10日間ですが、RosettaStoneをお借りしてフランス語を勉強する際、ひとつのルールを自分に課しました。
それは、
「腑に落ちなくても理解してなくても覚えてなくても、とにかく復習しない。前に進む」
です。
RosettaStoneには、以前間違えたり滞ったりしたところを、適当なタイミングでもう一度復習させるという機能が備わっているそうなので、完全にそれ任せにしていました。
すると、なんか「勉強している」という実感がないんですよね。
自分が何かを積み上げているのかいないのか、わからないまま、ひたすらプログラムだけが先に進んで行きます。
不安です。
ただ……RosettaStoneって、各章の最後に「マイルストーン」と称して、紙芝居風に物語が進行して会話をさせるというコーナーがあるのですが、そこで自然と、
「ケスクセ?(それなに?)」
とか
「ケスクブフェ?(何してるの?)」
とか、自分の口から出て来たんですよ。
かなりびっくりしましたよ。
これが、自分の中にフランス語を通し続けた結果、澱のように溜まったものなんだろうなあ。
大脳新皮質とは違う、より深い部分で染み付いた気がします。長いこと忘れないかも。
フランス語学習(たぶんどの言語についてもそうだけど)って、本当に薄皮を1枚1枚重ねて行くような、途方もない作業なのですが、「とにかくひたすら身体の中を通す」「必要であれば身体に残る」と割り切ってガンガン通して行けば、ストレス少なく進められるかもしれませんね。
その意味では、お借りしたから言うのではないですが、聞く、話す、読む、書く、全てが揃っていて、ボリュームもたっぷりあり、自動復習機能なども備わっているRosettaStoneはオススメです。
TOEICなどの特定のテストにどのくらい効果があるのかは判らないのですが、対象語学に関する地力はつくような感じがします。もちろん英語も中国語もあります。
なんかフランス人と結婚した友だちから「今度フランス語しかしゃべっちゃいけないお食事会しましょ」とメールが来たので、たぶん帰国してからもフランス語は細々と勉強し続けると思います……
と、いうわけで、17日〜22日くらいまで、小鳥ピヨピヨは基本的にはお休みになります(誘惑に負けて時々更新するかも)。オブワ!
拳児 1 秘伝
藤原 芳秀 (著), 松田 隆智 (原著)