先日読み終わった「ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり」が、当初の期待に反してもの凄くもの凄くもの凄くもの凄くもの凄く面白かったので、紹介します。
ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり
柳内 たくみ (著)
内容は、超ざっくりと言うと、「自衛隊 vs RPG世界」です。
ある日突然、銀座に異世界への「ゲート(門)」が開き、日本はゲートから出てきたドラクエ的(ロードス島的?)な世界から出てきた敵「帝国」に攻められる。
しかし、その後自衛隊が出動。その火力や戦術作戦実行力の前に、帝国は圧倒され、自衛隊はゲートの向こうの異世界に駐屯地を設ける。
物語はこの辺りからスタート。異世界での帝国との攻防と、異世界を巡ってのこちら側での国同士の攻防が複雑に絡み合います。
エルフも魔法少女もウサ耳ネコ耳も騎士団も出てくるし、特殊部隊もファントムやアパッチもパンツァーファウストも空挺団も出てきます。
政治や経済の話もてんこ盛りです。異世界側の封建制度的な話もですが、日本政府や官僚、アメリカや中国などとの外交外圧、マスメディアや科学者の話、オタクやコミケも異世界側と同じくらいちゃんと書かれています。
剣と魔法、火薬と権謀術数の世界です。
いやもう、よくもまあこんなに色んな角度からの色んな要素を入れたな、と、感心することしきりです。
「もしも現代日本とRPG的な世界が繋がったらどうなるか」というアイディアを元にして、予想されうることが躊躇なく気合いでガンガン詰め込んでいったのでしょうね。
結果として、最初から結末はある程度予想がつくというのに、その過程が全然読めない。次に何が起きてどうなるか全く予想ができない。ついついどんどんとページをめくってしまう、そんな物語に仕上がっています。
作者の知識の豊富さにも脱帽です。
この物語の主人公は「オタクの自衛官」なのですが、著者も元自衛隊勤務だそうで、実際に自分がオタクの自衛官だったのでしょう。異世界側のRPG的な世界の設定も細かいし、自衛隊の描写や用語もとても詳しい。国際政治などにも詳しそうです。
だから話の筋はあからさまにフィクションだし、会話のやりとりやキャラクターもラノベっぽいにも関わらず、妙なリアリティがあります。
(ところで、さっきから僕がしきりに「ファンタジー」という言葉を避けているのは、ファンタジーって別にRPG的なものだけじゃなくて、児童文学全体もそうだし、アリスやモモみたいなのもそうだし、と思っているため。参考:『いまファンタジーにできること』アーシュラ・K. ル・グウィン(著))
あと、この物語は、小説投稿サイト「アルファポリス」に投稿されていた作品です。だからというわけではありませんが、最初の1〜2巻は文章が粗い、素人っぽい箇所もあります。しかし描写説明も、会話部分も、話の構成や流れも、巻を重ねるごとにどんどんこなれて洗練されていきます。そんな作者の成長を楽しめるのもこの作品の良いところです。
あー面白かった!!!
エンタティメントとしてよくできていて、大変に楽しめました。
3.11以降、自衛隊の好印象が急上昇しているかと存じますが、この『ゲート』はそんな自衛隊がさらに好きになる、そんな小説だと思います。
全5巻。それぞれけっこうブ厚いですが、スラスラと読めちゃいます。
まず1巻だけでも、ぜひお読みください。オススメです。
ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり
柳内 たくみ (著)