六本木を歩いていたら、一風堂があったんです。
なんだか真新しい。新規オープンかしら。
もしかしてここが、カイ氏伝が言ってた、あの角煮まん一風堂……?
僕は直前にパーティに出たばかりで、お腹はパンパンに膨れ上がっていたのですが、ふと思うところがあり、ためらうことなく、一風堂に入ってきました。
「思うところ」というのは、アレです。
角煮まんです。
僕は昨年に引き続き、一風堂角煮まんジャーニーを続けています。今までの旅の経緯は以下のとおりです。
もう勢い余ってニューヨークに飛んで、角煮まんだけ食べて帰ってくればいいんじゃね? という気もしますが、いやでもちょっと待ってちょっと待って。冷静に考えておかしいでしょう? あれだけニューヨークで流行ってて、「麻薬だ」とまで言われてるのだから、ビジネスとしては、一風堂は日本でも同じ角煮まんを展開するはずだし、するべきだし、しないはずがないでしょう?
だから、待ってればきっと日本でもその角煮まんを食べれる日がくる、いや、すでにもう来ているのかもしれない。そういう考えを拭いきれないわけです。
そんなわけで、僕は店に入っていきました。
「いらっしゃい! ご注文は?」
「角煮まん」
「はい?」
「角煮まん、だけください」
相変わらず漢らしいオレ! ラーメン屋に来たというのにラーメン頼まず角煮まんだけオーダーするオレ! 目的が明確で格好いいオレ!
怪訝そうな顔をして、店員が去っていきます。
しばらくすると、角煮まんがやってきました。
オーレオレオレ! 角煮まんオーレ!
ちょっとこのビジュアルは期待できるんじゃないですか!?
銀座で食べたクズ肉を炭水化物で挟んだまがい物と違って、肉もちゃんとブ厚い。角煮です。
さっそく、食べてみます。
あーこれは……
ニアー!!!
もしかしてかなり近い!? ニューヨークのアレに近い!?
肉は柔らかくジューシーです。
マスタードソースがピリリとアクセントになっています。
バンズもほかほかで柔らかいです。
美味しいです。普通に美味しい。
でも………
食べながら、僕、思ったんですよね。
こんなレベルなはずがないんじゃないか、って。
だって麻薬とまで言われる食べ物ですよ? ニューヨーカーが大絶賛ですよ?
この角煮まんは確かに美味いけど、ニューヨークのあれは、もうなんというか、スカウターで見たらあまりの戦闘力の高さにスカウターが壊れるくらい、圧倒的な力を有しているはずじゃないでしょうか?
ひとくち口に含むと、たちまち舌は踊り、全身の細胞が喜び、魂はマンハッタンの夜を飛び回る、そのくらい美味いはずじゃないでしょうか?
美味かった。
でも、違う。
僕は嬉しいような悲しいような複雑な気持ちで角煮まんを食べ終わり、勘定を払ってドアを開け、寒空へと足を踏み出しました。
空にはオリオン座がまたたいていました。オレの角煮まんジャーニーはまだ続く。でも、希望は見えた。そんな実感を得て、僕は帰路につきましたとさ。