絶賛世界一周中のまゆみんから、ヴァチカンからの絵葉書が届きまして。
なんでもヴァチカンには、ローマ法王が空位のときだけ発行され、かつ空位期間しか使えない特別な切手があるのだそうで、それを使って送ってきてくれたのです。
以下の切手がその「SE VACANTE」↓
おー、これは僕が好きな感じのデザインですね。
僕は学生時代はイコノロジー(図像解釈学)をやっていたので、こういう中世のシンボルっぽい図像が好きなのです。
イコノロジー(or イコノグラフィ)は、絵に描かれているそれぞれのモノがそれぞれ意味を持っていて、その意味から絵画全体のモチーフやメッセージを読み解くという学問です。例えば犬は忠誠を、船は信用を、上を指し示してると神への愛を表している、といった感じで。
これら図像の意味が分かっていると、中世絵画への理解度が飛躍的に増すと言われています。隅っこに無造作に描かれている置物の意味などが理解できるからです。
また、中世は言論の自由がなかったし、絵画はアーティストの創作意欲ではなく基本的に教会や貴族からの依頼でクライアントの希望に沿って描かれていました。
だから画家は、意にそぐわない仕事の以来を受けた時は、図像を巧みに組み合わせて、画家が本当に伝えたいメッセージを埋め込んでいたこともある、と言われています。キリスト教の絵なんだけど実は全く違うメッセージ、例えば老いることの悲しみや錬金術の教義を紹介している、とか。
まあこの辺は解釈が分かれるところですが、本当だとすると結構ミステリアスです。
この切手の場合は、天使が儀礼的な斧聖ペテロの鍵を2本と儀礼的な傘を持っていますね。ちゃんと調べていないですが、これらは教皇または教皇が関連する儀式の象徴なのでしょう。それは聖なるものなので、当然天使(=神の使い)が支えている。
だとすると、この切手の図像の意味は、
「今は教皇の座には誰もいないよ。でもローマ・カトリックの栄光は神が支えてるから大丈夫よ」
という感じかな、と推測できます。
イコノロジーに興味がある方は、若桑みどり先生の著書を読んでみるといいです。
この辺が入門編で分かりやすいかと。
イメージを読む
若桑 みどり (著)
絵画を読む―イコノロジー入門 (NHKブックス)
若桑 みどり (著)
また、慶応のEIRIプロジェクト(旧HUMI)が、図像の意味をまとめた16世紀刊行の辞典「イコノロギア」をWeb化してくれています。
そんなこんなで、長く楽しめた絵葉書でした。送ってくれてありがとうございました!
まあ、切手の図像よりも、絵葉書の裏の写真で、
ベネディクト16世が卒業アルバムの集合写真撮影の日に風邪を引いて休んじゃった生徒みたいな扱いを受けている方が気になったのですけどね、実は……
p.s.斧じゃなくて鍵でした! 聖ペトロの天国の門の鍵。デカいですね…