えっと、今週金曜日に「ツブヤ大学特別講座 「ウェブ時代の文章読本2013」」というイベントに、山本一郎さんやLINEの佐々木大輔くんや日経BPの竹内靖朗くんと出演します。もしお暇な方いらっしゃったらぜひ。
で、このイベントに出るということで、しばし思い返してみたのですが……
小鳥ピヨピヨをはじめてから、先月で、10年になりました。
10年というと結構大きなひとかたまりです。そんなに長く続けていれば、さぞかし文章力も上がったことでしょう。
どれどれ、10年前の記事を読み返してみようかな。
……あれ!? 思ったより変わっていない(泣)?
いやいやいや、しかし、自分としては、相当に試行錯誤してきているのです。
きっと螺旋のように、いつも同じような位置に戻りながら、よく見るとわずかに上に上がっているはずです。
たぶんそう! きっとそう!
と、いうわけで、今日はこの10年の、文章面での試行錯誤を振り返ってみようと思います。10年分だからちょっと長いよ! ご容赦を。
なお、今回は小鳥ピヨピヨの、しかも文章面のみを念頭に置いています。
ギズモードについては、「ブログメディア運営のための55の鉄則」を、ブログそのものの10年は「「ブログ 〜この10年〜」を自分なりにまとめた」にまとめたし、書籍「ブログ誕生」も素晴らしいので、そちらをご覧ください。
● 最初の1ヶ月
最初の1ヶ月は、いろいろと目新しくて、いろんなパターンの記事を書いていました。
面白げなこと、まじめなこと。
ニュース、レビュー、日記。
長いの、短いの、写真だけ。などなど。
目的は、「続ける」こと。
当時僕はニフティでココログというブログサービスを立ち上げようとしていました。だから、
「自分でもブログやって、『ブログを書く人の気持ち』を肌感覚で知ろう!」
と考えていたのですね。
続けるためには、僕の場合、以下の2つの要素が必要でした。
・書くのが面倒じゃない
・他の人に読まれる
あんまりしっかり気合入れて書くのも面倒だし、誰にも読まれないとモチベーションが湧かない。
いろいろ書いてみた結果、僕には「面白ネタや可愛いネタを、暖かく楽しいイメージで書く」のが性に合ってる、という感触を得ました。
文字を大きくしたり色を変えたりといった、いわゆる「テキストいじり」も好きでした。
一方、他の方に読まれる方、認知は、どうやってたんだっけな?
当時ははてブもTwitterもFacebookもLINEも、mixiもありませんでした。
一応ひと通りのこと、たとえばpingサーバーに通知したり、他ブログにトラックバックを打ったりはしていましたが、何が効果的なのかは、まるで手がかりがつかめず、暗中模索でした。
いずれにしろできたてのブログで、基本的な読者数が少ないので、増え方にはえらく敏感でした。昨日は10PVだったけど今日は18PV。この増えた8は誰!? みたいな。
● いきなり爆発する
そうこうしているうちに、ある日、以下の3つの記事が「かとユー家断絶」「俺ニュース」「TBN」など、10ヶ所以上の大手個人ニュースサイトに続々と取り上げられたのです。
・スネ夫を正面から見たら
・使えな過ぎて笑う、パワーポイントのクリップアート集
・妖しすぎる、インドの防犯安全ポスター
今でも覚えていますが、凄かったです。1日のアクセスが、今までは18PVとかだったのに、いきなり20万PVに跳ね上がったのですから。10000倍です。
まるで物理的な風圧すら感じるようでした。
何か大変なことが起きているような気がして、慌てたし、興奮もしました。
そして、たぶんその勢いで、当時「日本初のブログコンテスト」と銘打たれていたドリコム主催の「blog of the yeah! 2003」で、ベスト記事賞というのを受賞したのです。
その後アルファブロガーなども受賞させていただきました。
ここまでで3ヶ月。
規模はともかくとして、コツコツと書き方や認知のされ方などの試行錯誤を重ねていれば、3ヶ月で大なり小なり何らかの手応えがある、というのは、割とよくあるケースだと思います。
最近はソーシャルがあるので、以前よりは発見拡散されやすくなっていますしね。
ただ一方で、今はブログのスタイルは出尽くしている感があるので、オリジナリティを出すのは、昔より難しくなってます。
あまり周りを見ず「自らの気持ちに正直に」書くのが良いと思います。
ブログを書くというのは、どんな形の記事でも、ある程度は自分の内側を見つめる作業です。
● 友だちができる
文章力そのものとは関係がないのですが、ブログを続けてて一番大きかった変化は、人間関係です。
気がついたら僕の周囲の友だちは、7割くらいネット経由かつ小鳥ピヨピヨを知ってる人になっていました。
30過ぎて仕事関係でもない人たちと、これだけ知り合えるなんて、とても嬉しいです。みんなありがとう。
ブログ以降、「ネットでの付き合い」と「リアルで知り合う」がグッと近づいたように思います。それまでは多くの場合、「ネットはネット、リアルはリアル」と分ける人が一般的でした。
● 飽きる
そうしてしばらく楽しく遊んでいたのですが、4年くらいすると、なんだか飽きてきました。
いつからだっけな、この記事を書いた前後くらいからだったと思います。
なんか、このパターンなら、いくらでも書けるような気がしてきたのです。この武器スキルはもうMaxに達したというか。
だから、「このスタイルからは離れて、新しい書き方、新しい文体、新しい視点を模索したい」、そんなことを考えたのです。
そもそも小鳥ピヨピヨは個人ブログで、誰に頼まれて書いているわけでもありません。
僕は、新しいことを試すことにしました。
● 試行錯誤という名の迷走
ここから、試行錯誤という名の迷走がはじまります。
道玄坂の記事を書いたのが2007年だから……もう6年経つのか! 長いな!
いやほんと、いろいろな書き方をしてみましたよ。この記事の最後の方に、今思い出せる範囲の試行錯誤をリストにしておきますね。
ただ残念ながら、どの試行錯誤も、あまり根付いたとは言えません。
理由は、覚悟が足りなかったというか、計画的ではなかったからというか。
割と思いつきで行き当たりばったりに新しい文体やコンセプトを試してみては、ソーシャル数やアクセス解析の結果を見て「思ったほど反応がないな」と残念がり、また元に戻るという繰り返しでした。
日数をかけて何本もそれで書いて、身体に慣らしていく、みたいな作業をしきれませんでした。
本当は、1ヶ月~3ヶ月くらいは、周囲の反応なんか気にせずに淡々と実行すると良いのでしょうね。
● そして今
今は、いろんな書き方やいろんなネタを、その都度その都度の気分で使い分けています。
主に通勤中に電車の中でiPhoneで書いています。
「使い分けている」というと格好いいですが、自分の中では「定まってないな」とか「うつろいでいるな」という感触です。まだまだ試行錯誤という名の迷走中です。
それと、最近、以前よりも文章の細かい部分に敏感になっているのですよね。
いつも、初稿は5~10分くらいでザーッと書くのですが、最近はその後、延々と言葉を直しています。
例えば最近だとこの記事。
これはいつものようにiPhoneで初稿は3分くらい、その後の直しに1時間くらいかかっています。
電車の中で、延々とああでもないこうでもないと直しているのです。
ひとつの行の文章的精度だとか、文章全体を見た時の粒度の揃い方とかが、とても気になるし、今は、それらをブラッシュアップすること自体が好きです。
そしてそれは、良いことなのか悪いことなのか、実はわかりません。
特にネットでは、下手な文章でも、一気に書いてそのまま出した方が、人気になることが多いように思います。
理由はいろいろあるでしょう。本音っぽい、文章というよりトークを読んでるみたい、勢いに引き込まれる、身近に感じられる、などなど。
小鳥ピヨピヨの大昔の記事を見直したりすると、「これよく書けてるなあ」というものに出会います。
例えばこの辺。でもこの頃は、ほんと書くのに時間かけてないんですよね。長くて20分。
勢いの力がポジティブに働いた例でしょうか。
・「手書き検索機能」で遊ぶ
・六本木に巨大ハウス箱、今度は期待していいのか?
・いとうせいこうのラップ
・ボーリング・フォー・コロンバイン
それと、最近たまにやっている、一気に書いて推敲せずそのまま投稿する小鳥メモメモの「えいっ」というコーナーが、友だちの間で評判がいい。
「あれ、すごく面白いです! もっと更新してください!」と言われることもしばしばです。嬉しいながら複雑な気分です。ピヨピヨの方が力入れて書いてるのに。
だから、僕がこの6年間やってきていることは、全くの無駄である可能性もあるわけです。
ネットの場合は、文章のクオリティなど一切気にせず、本音を素直にそのまま書いた方がいい可能性は高いのです。
文章推敲に価値なんかないのかもしれないのです。
● それでも続けるのは何故か
たぶん、僕みたいな意識の変遷を辿る人って、多いと思うのですよね。
最初は書くのが楽しい!
→反応が来て楽しい!
→知り合いができて楽しい!
→飽きてきた
→アクセス数やソーシャルでの反応も伸び悩んできた
そして、ブログはフェードアウトして、FacebookやLINEやTwitterに移行していく。
でも、僕は続いています。
何故か。
僕は文章に野望があるのです。
もっと上手い文章を書きたいのです。
スタイル、言葉の選び方、長さ、リズム感。
最終的には、「内容なんてなんでもいい、読んでるだけでうっとりする」みたいな文体を獲得したいのです。
そういえば僕は、昔から文章ばかり書いてきました。
10代の頃は『我が名は魔性』に代表される中二病小説。
大学生のころは、勝手に定期的にコラムを書いて、バイト先の壁に貼っていました。
就職してからも、社内ネットで、内輪受けのテキストサイトを運営していました。
テキストサイトも何度か作ったことがあります。
世の中に文章上手い人ってたくさんいるじゃないですか。作家はもちろん、ブログでもすごいのあるし、Twitterの140字に名文詰め込む名人もいるし、Facebookで友だちだけに公開している人にも、2ちゃんや増田で匿名で書いている人にも、異常に文章の上手い人たちがいる。
ああいうの書けるようになりたいなあと思っています。
僕にとっては文章は何かを伝えるための手段ではなくて、それそのものが目的、というところがあります。
僕は才能があるわけではないので、試行錯誤することなくスラスラと名文を書くことはできません。
だから試行錯誤は、面倒くさいながらも楽しんでいます。
だって試行錯誤していれば、いつの日かより洗練された、新しい文体を獲得できるかもしれないから。
小鳥ピヨピヨは、いつでも、僕にとっては実験場です。いろんなことを少しずつ試すことができる、貴重なラボです。
この10年ずっとそうだったし、恐らく次の10年もそうでしょう。
いつか、あまりの進化っぷりに、自分で自分自身に驚けるといいなと思います。
また、読んでくださる方々にも、もっともっと楽しんで欲しいなと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【参考:試行錯誤のリスト】
・テキストいじりをやめてプレーンテキストで書く
・書かない。ほぼ休業状態(3.11後しばらく休業)
・語尾をです・ます調にしてみたり、だ・である調にしてみたり
・一人称を僕にしてみたり俺にしてみたりオレにしてみたり
・改行の工夫。改行したら一行開けるとか開けないとか
・句読点の工夫。句読点をたくさん打つとか一気につなげて書くとか
・どこまで漢字にするか(例:「わかった」「分かった」「判った」)
・タイトルの試行錯誤。興味を引きそうに、でも釣りすぎないように
・ケータイで撮った写真にひとことふたことそえるだけ
・腰を据えてガッツリと長文を書く(この記事とか)
・むしろTwitter並に軽く一言だけに済ます
・何も考えず思ったことをメモ(例)
・一気に書いて、推敲せずにそのまま公開(「えいっ」)
・告知など恥ずかしがらずに書く
・流行りネタのパロディ
・ほんと自分しかわからない日記みたいの
・個人ブログなんだけどPR記事書いてみる
・ペースやボリュームを変えてみる。「短い記事を毎日」「しっかり書いたものを週1回」「そこそこのを週3回」など
・子供のことを書いてみる
・旅行などで、リアルタイムにも更新し、後でまとめもする(那須とか清里)
・書籍のレビューをしまくる(「2ヶ月半で289冊読んだ」シリーズなど)
・2ちゃんのスレをまとめる
・翻訳ものをしてみる
・プログラミングもの(ruby on rails、htmlやcssモノ、など)
・創作(短編小説、SS、連載小説、コント)
・まじめに主張してみる
・情報を右から左に流すだけ
・ライフハックっぽい生活お役立ちネタ
・仕事術とかライフハックっぽいの
・随筆やエッセイみたいのを淡々と書く
・写真とひとことの連続みたいなレポート。(941風というかネタフル風というか)
・タリーズにさえいればいいのかも
・レシピ(1、2、3、4、5、6、7、8など)
・慎重に慎重に炎上してみる
・まとめ記事(円谷エイプリルフールや離婚・復縁など)
・趣味系を積極的に(僕の場合はストリートダンス系。これとかこれとか)
・昔の体験談を書く(一部だけど1、2)
・気になったものをしつこく追う(例:daichi:1→2→3→4→5→6→7)
・naverまとめっぽくレポート書いてみようか
・その日気になったニュース一覧紹介