先日、吉祥寺ユザワヤを改装て誕生した「Kirarina」に行ってきましたので、簡単にフォト・レポートをしたいと思います。
……というのは実はどうでもよくて、僕が本当に語りたいのは、はるか昔のこの場所に何があったか、ということだ。
今でもあれは夢か勘違いだったんじゃないかと思う。しかし一方で、あれが、走馬灯のひとコマにもきっと出てくるだろうというくらいにくっきりと僕の記憶に刻まれているのも、確かなのだ。
僕の頭に残っているそれを、インターネットでさらせば、「あー覚えてるそれ!」という同士や、僕よりも遥かに正確に状況を説明できる人、写真で記録してる人などが出てくるかもしれない。この一見ゆるふわなフォト・レポートには、そんな計画というか、戦略というか、期待というか、祈りというか、そういう野望が散りばめられている。
それと、これは意図したものではないのだが、吉祥寺への愛みたいなものも散りばめられている。まあ故郷ですからね。
(これがKirarinaの入り口。Kirarinaのロゴ。)
あれはいつのことだったのだろう? 1980年代の半ばから後半、もしかしたら1990年代だったかもしれない。
今やKirarinaと化したこの場所は、かつて短期間、巨大な廃墟のようなゲームセンターだったことがある。
誇張ではない。本当に廃墟のようだったのだ。
まず1階。ここには何もない。コンクリートむき出しの空間がだだっ広く開けている。天井がやけに高くて、照明はほとんどなくて、奥の方は闇といっていいくらい暗い。
自転車置き場だったのかもしれないが、何が起きていてもおかしくなさそうな、北斗の拳あるいはAKIRAのような廃墟感があった。
(スタバとBEAMS。この2大お洒落が並んでれば間違いない!)
1階の隅っこには、動いたり動かなかったりするエスカレーターが備え付けられていた。
そして、エスカレーターを登ると、そこには、広大なゲームセンターが広がっていた。
とにかく広いゲーセンだった。いっさいの仕切りがなく、コンクリートむき出しの空間に、ズラリとゲーム機が並べられている。
天井は高く、照明は暗い。
当時はゲーム機にもバリエーションはなく、テーブルの面に画面が埋め込まれ座って遊ぶタイプか、背の高いテレビみたいなもので立って遊ぶか、その2種類しかなかった。
そんなものがだだっ広い空間にグリッド上に並べられている。
不気味な光景だ。工場のようでもあり、教室のようでもあった。
(Kirarinaの中はこんな感じ。服と雑貨とカフェ。まあ予想通り)
そんなゲームエリアが、3階分か4階分もあった。
階ごとに何が違うのか……なんとゲームは、値段で階が分けられていた。
最上階は最新ゲーム。100円(当時はゲームは100円が最高額だった)。
その下の階は50円。
その下の階は30円。
そして一番下の階は、10円。
10円の階には、インベーダーのパチもんみたいなゲームや、子供用のパチンコなどが置いてあった。当時小学生?だった僕ですら見向きもしないような、駄菓子屋に置いてあっても誰も遊ばないような、そんなゲームたちだ。
僕は50円の階が好きだった。ときどき100円クラスのゲーム機が置かれていて(筐体がアウトレットだったのだろうか?)、とても得した気分になった。
(ABCが満員だった。ABCらしいし、吉祥寺らしい)
ただ、このゲームセンターは、いつしか閉じられてしまった。
そしてこのビル自体も、吉祥寺駅直結という好環境なのに、長い長い間、天の岩戸のように塞がれたままだった(この間、このビルの中では、一体何が行われていたのだろう?)。
そしてある日、ユザワヤが来た。
手芸好きな吉祥寺住人にとって、ユザワヤが来ること自体は歓迎すべきことだったが、一方で、その頃すでに吉祥寺には、地域と完全密着したビーズ屋やら布地屋やらが多数あったので、そういうお店に配慮して、諸手を上げてユザワヤを歓迎、ということまではできなかった。どこか心理的な遠慮があった。
そしてそのユザワヤもこのビル全体を使うほどの規模は維持できなくなり、縮小。空いた空間を京王グループが買い取り、そしてこのたびのKirarinaとなる。
(ユザワヤは健在! ただし2階分のみ)
でも僕は、Kirarinaの存在意義がわからない。
だって吉祥寺には、既にファッションビルは山ほどある。飽和状態といっていい。
(Kirarinaはこういうイメージらしい。コピスやatreと何が違うのか……)
まずはライバルである近鉄(現ヨドバシカメラ)や伊勢丹を叩きのめし、今や吉祥寺の古老として鎮座する東急。
第一次吉祥寺ブームの火付け役となった、丸井とパルコ。この2大巨頭の隙間でなんとか息をする場所を見つけようとあがく西友。
余談だがこの辺りから、吉祥寺がお洒落シティ(笑)として注目されはじめ、東急の両脇通りや中道通りや丸井裏やハモニカ横丁が開拓されてゆく。そしてHanakoが推しに推してくれたおかげで、吉祥寺は現在に至るまで、住みたい街のランキング常連な街(これでも謙遜した言い方)と化す。
(本好きが多く住んでる吉祥寺には、大きな本屋さえ置いとけば間違いない。センスのいい書店員が頻繁に特設コーナーを作ってくれれば、なおベター)
そしてこの数年のファッションビル建設ラッシュ。ロンロンを今風に改めたatre。そしてatreとほとんど同時期にオープンしたコピス。
そしてこのたびのKirarina。
どのビルもターゲットは同じ。20代〜50代くらいの、生活をちょっと(できればオーガニック寄りに)お洒落に演出したい男女に受けが良いような、ファッションとカフェと雑貨を並べている。
(トイレのマーク。これは今度、娘と一緒にアイロンビーズを作るときのネタにしよう)
どうして同じようなコンセプトの店を、同じような時期に出すのだろう。
コレド室町を見習って欲しい。「和」をキーワードにして、入居している店舗全てに和テイストを要求した。おかげでチーズ屋までわさび味のチーズなどを売る羽目になっている。でもそこがいい。
(窓の外の風景は……うーん……)
今まさに工事中の中道通り入り口とか、オデヲン隣とかも怪しいんだよなあ。またファッション雑居ビルか、あるいはビックカメラ辺りか、ドン・キホーテ辺りか、巨大ユニクロ辺りができそうで戦々恐々としている。
あとサンロードとダイヤ街も、資金が集まり次第、一斉にリニューアルがはじまりそうな気がする。そしてコピスやアトレやキラリナみたいな場所になってしまう気がする。
できれば、吉祥寺には、「吉祥寺らしさ」を維持して欲しい。
こじんまりとした、個性的な、少しダサい(洗練しきってない)お店がズラリと並ぶ。
自分の趣味やセンスや生活を大切にし、来てくれるお客さんを大切にする。
お客さんの方もお店を大切にする。
大賑わいなのに、ゆったりとした空気が流れる。そんな吉祥寺であり続けて欲しい。
あるいはいっそのことイオンとかイトーヨーカドーができてくれたら、今までの吉祥寺にはなかった種類の便利さが吉祥寺に組み込まれるのに。でも大きな駐車場を確保できないから無理なのかな。
(抹茶を出すカフェが! 抹茶マニアとしてはこれは嬉しい!)
(でも肝心の抹茶は量が少なすぎ…ショットダブルで、とか頼めるのかな)
追記:このビル、ニコニコ大百科に専用ページが作られ、真・女神転生のダンジョンのモデルとなるほど有名な廃墟だったらしいです