「たまたま取材された会社が弟の会社だった」というのは、何やら因縁めいていて、とても奇妙な感覚ですね。
僕の弟は、数奇な運命を経て、もう15年以上シンガポールで働いています。
弟は、最初に働いていた会社を4年くらいで辞めて、当時両親の住んでいたシンガポールに行ってニートと化し、しばらくブラブラしてました。2000年とかそのくらいの話です。
当時はなんというか、まあモラトリアムですよね。いつ終わるかわからないタイプの、不安なモラトリアム。
何をしたらいいのか、何がしたいのか、まるで先が見えない。ついには悩みをこじらせて「時計職人になる」とか言い出す始末。
いや、いいよ? 時計職人立派な仕事だけど、あまりにも唐突すぎないか? だってもうネットの時代だよ!? 本当にそれでいいの!? と喉元まで声が出かかるのですが、でも本人の選択ですからね。頭ごなしに否定もできない。
小さいころからずっと知ってる弟が、そのとき、人生のピンチを迎えていて、ドキドキしました。
あのほっぺがプニプニだった弟が、いじめっ子から僕を守ってくれた弟が(普通は逆!?)、一緒に海の岩場を冒険した弟が、渋谷駅前の交差点で武将ごっこをしていた戦国時代オタクの弟が、お洒落でリア充だった弟が。
とにかく当時は、「ウチの弟いったいどうなっちゃうの!? とにかく良い方向に行きますように!」と祈るしかない、みたいな感じでした。