えっと、1ヶ月ほど前のことですが、また村上春樹さんから質問のお返事メールが届いておりまして。
それで、長きに渡る疑問が、解決したのです。
【疑問】電子書籍版「村上さんのところ コンプリート版」には、サイト終了時にはまだ読めていなかったメールへの回答も掲載されるのか
【回答】される! だってサイト終了後に回答メール来たもん。載せないはずがない
この春、僕が夢中になったサイト「村上さんのところ」が5月13日に終了したとき、村上春樹さんは、まだ4915通のメールを読めていませんでした。そしてこう約束してくださいました。
サイトの更新が終了したあとも、僕は責任をもって「積み残し」のメールをすべて読み、そのうちの一部にはこれまでどおりお返事を差し上げます(サイトにはアップされませんが)。すべてのメールに僕が目を通すという最初の約束はちゃんと守りますので、その点はどうかご安心ください。
彼は、この約束を、律儀に忠実に守っていたのですね。サイトが終了して40日も経ってから返事が来たことが、それを証明しています。
いやもうこれは絶対買うわ。買うでしょ。
「村上さんのところ」の面白さは、そのQ&Aの膨大さにあります。村上さんも最後のあいさつで書いていましたが、あれだけ読んで(37465通)、あれだけ返事すると(3716通)、自分を飾りきれないんですね。
リアルタイムに読んでいた自分としては、そうだなあ、4月頭くらいから、明らかに村上さんが疲れて投げやりになっているのが散見されるようになりました。
例えば夫婦喧嘩について、まだ元気な頃は、
べつに怒られているわけじゃないんです。何か見解の相違みたいなものがあり、軽い衝突状態が生じたとき、僕はどちらかといえば波風を避ける人生を選ぶし、彼女は波風を避けない人生を選ぶという傾向が、あらためて浮き彫りになるというだけのことなのです。
と、作家らしく優雅な文章で回答してたのが、後々になると、面倒くさくなって、
ひとことでいえば妥協です。たとえ相手が妥協しなくても、こちらが妥協する。
と、端的で正直なひとことで済ませちゃっています。
結果的に、はからずも、ぶっちゃけた素の「村上春樹の頭の中」を知ることができる、貴重な資料となってしまっております。
電子書籍版「村上さんのところ コンプリート版」は、今日発売されたようです。
発売記念に、サイト未掲載分の回答の一部を公開するFacebook特設サイトも開設されたとのこと。
また、発売を記念して、「村上さんのところ」がFacebookページとして限定復活します!
「村上さんのところ」公開終了時点では、村上さんはまだ4915通のメールを読み終えておりませんでしたが、「追加分」として385通の回答を書きました。そのうちの一部を今日から8月2日(日)まで毎日少しずつアップしていきます。わずかな間ですが、帰ってきた「村上さんのところ」をぜひご覧ください。(新潮社から届いたメールより)
せっかくの「買う動機」ナンバーワンになるサイト未掲載分回答を、なぜ一部といえど公開してしまうのか、その辺がちょっと、いやかなり解せませんが……きっと何か深い戦略があるのでしょう。
この本は、少し立ち遅れている日本の電子書籍界がとうとう本格稼働しだす記念碑的な本になるかもしれないので、その意味でも応援しています。
今年は、超名作の予感しかしない「職業としての小説家」も出るし、あと久々の旅行記も出るようだし、翻訳本も出るようだし……小説こそありませんが、村上春樹を味わい尽くせる祭みたいな年ですね。
マッドマックスやチャッピーといい、なんか最近「過剰」なものが多い気がします。今年のテーマなのでしょうかね?