きっかけは、お義父さまから、手作りの紙芝居舞台を頂いたことでして。
ある日の夜、子どもたちをベッドに寝かせて、もらった紙芝居舞台で、紙芝居じゃなく絵本を読もうとしたのですが、当たり前なんですけど読みづらかったんですよね。
だからもう絵本読むのやめて、舞台の真ん中から顔を出して、アドリブで落語みたいな話をやってみたんです。確か、「しょうが幼稚園」という、先生や園児たちが常にしょうがをかじりながら、何事においても「しょうがないっか!」とダジャレで済ましてしまうという話だったと記憶しています。
これが、子どもたちにバカ受けしまして。
それ以来、毎晩のように、ベッドに入る子どもたちを前に、アドリブでお笑い系のお話を作っています。
子どもたちは、僕が帰宅するなり「今日も寝る前に笑い話して!」と、とても楽しみにしており、ときどき僕が飲み会で夜遅くなる(から笑い話ができない)と、悲しくて泣いちゃったりしているそうです。
大変なプレッシャーです。
毎晩新しい笑い話を作るとか、難易度高いって!
体力気力の好不調もあるし、アイディアが全然湧いてこないときもある。それでも、ほぼ欠かさずに毎晩、子どもを飽きさせないように工夫しながら、話しながらお話を作っていくのです。
やるからには面白がってもらいたいから、頭はフル回転です。
嫌なら止めればいい? うん、そうなんですけど、お話をすること自体は、楽しいし光栄なんですよね。僕のクリエイティビティを鍛える練習にもなるし、子どもたちにそんな楽しみを提供してあげられているというのも嬉しい。
でもさ、いつか子供たちも飽きると思うんですよね。
そして少しずつ、「今日はお話する?」「ううん、いい」と断られる日がはじまり、それが増えていき、いつしかこの習慣はなくなってしまう。そのとき僕は、寂しさを覚えると同時に、子育てとは全く関係なく、ある種の敗北感のようなものも感じるでしょう。ああ、僕の創作能力はこの程度だったか、みたいな。
だからまあ、事前に準備するまではしないまでも、毎回それなりに気を入れてやっています。それがプレッシャーにつながっているのでしょうね。
昨日は、「シンデレラのお城の舞踏会に、かの有名な『意地悪な継母と姉たち』が来ると聞いて、一目その姿を見たいと世界中から(ディズニー)プリンセスが集まってくる」というお話をしました。
アナ:「あの意地悪な継母と姉の方々に会えるなんて! 今夜は本当に楽しみ、ね、エルサ?」
エルサ:「そうねアナ。でもお行儀よくね」
ソフィア:「あ、来たわ! 本物よ!」
白雪姫:「わあ、あれがかの有名な意地悪な継母とお姉さま方!」
オーロラ:「さすがオーラが違うわね」
ジャスミン:「うん、『持ってる』って感じよね」
ラプンツェル:「はじめまして、ファンなんです! 握手してください!」
ベル:「はじめまして! あんなに次から次へと意地悪なことを思いつくのも大変なご苦労だと思うのですが、普段どんなトレーニングをされているのですか?」
姉たち:「……なんだか変ね、今日の私たち、モテモテみたい……」
継母:「お前たち! これはチャンスよ! 今夜こそ素敵な殿方を見つけるのよ!」
姉たち:「はい、ママ」「はい、ママ」
継母:「いいわね、合言葉は……」
継母と姉たち:「お金と身分!」
アナ:「キャー出たー決めセリフ出たー!」
アリエル:「すてき! 夢みたい!」
みたいなことを延々と話していました……面白いか面白くないか? まあえっと、アレだと思うのですが、子どもたちは笑っていたので、良かったんじゃないかと……
さて、今夜はなにを話しましょうか?