本当は最近見た映画について連投する予定だったんだけど、「インターネットで最も危険な場所」というノートンのプロモーションが格好良すぎて、思わず予定変更して書きなぐってしまっている記事ですこんにちは。
これは、世界中でハッカー、そしてハッカーに武器(サーバーや回線)を提供する業者を取材したドキュメンタリー動画です。現在エピソード2まで公開されいて、今後どこまで公開されるかは不明。
いやこれ、不謹慎な面があるのを承知して言うけど、最高だわ。
『カッコウはコンピュータに卵を産む』というハッカー追跡ドキュメンタリー本(と名著『ニューロマンサー』『スキズマトリックス』)でネット業界に入ることを決めた僕としては、感慨深い思いを感じずにはいられません。この動画で紹介されているものは、ほとんどは既に知っているものではありましたが、やはりこうやって取材してまとめられて、いろんな人の立場をパラに並べられると、見応えが違います。
そして、これを提供しているのがノートンというところが、このドキュメンタリーに更なるクールさを与えています。
この動画にノートンは出てこないにも関わらず、この動画で、ノートンは「ウィルス対策ソフトを作っている会社」から「全世界を覆う、目に見えない戦争や悪の組織から『あなた』を守ろうとしているクールなヒーロー」にガラリとイメチェンしちゃっています。あのね、ステマでもPRでもネイティブアドでもないですよ。いち意見です。
ところで。
こういうドキュメンタリーは、取材能力やコーディネート力、編集力、企画力がないと作れません。その辺のネットのサービス企画屋(僕のこと……)では手も足も出ない領域です。
こういうものを作るノウハウは、たいていテレビ局や番組製作会社、新聞雑誌社などの「マスメディア」が握っています。
しかし、マスメディアは最近検閲も厳しいし、モンスター視聴者/読者からの批判も多いし、スポンサーも保守的なので、あまりヤバいもの、ギリギリなものには手を出しません。今回のノートンのやつ程度であればまだ流せるかもしれませんが、例えばストリートにおける音楽と麻薬の最前線に突撃するVICEの「ATLANTA」のようなものは難しいんじゃないかと思います。
そういうものは、今、どんどんインターネットに移行しているし、これからもその傾向は続くと思います。
ここ一年ほど、また、動画配信(ネット企業)側、または動画制作(番組製作会社やテレビ局)側から、ネットでの動画配信とビジネスの仕方について、相談を受けることが増えてきました。
8年くらい前にも、似たような相談が集中したことがあったのですが、当時はうまく言葉にできなかったことで、今ならハッキリと言えるアドバイスが、ひとつあります。
コンテンツ面に限って言うと、ネットとテレビの最大の違いは、クオリティじゃなくて「毒」だ、ということです。
インターネットにテレビより面白いコンテンツばかりが溢れているなんて全然思わないけれど、毒だけはより多くある。(普通の人 by 銀座愁流より:)
注意していただきたいのですが、ここで推したい毒は、人を傷つけるような誹謗中傷やいじめやdisや罵詈雑言や狭量さ、その結果としての殺伐オンラインのことじゃありません。
VICEや今回のノートンみたいに「ヤバいところに潜入」というのもそうですが「これ地上波で流しちゃダメだろ」というアニメとか、ギリギリなところを攻めるギャグとか。最近だと匿名の誰かが書いた「日本死ね!」とか、毒ですね。
もちろん、ネットには他にも「スモールスタート(リーンにスタート)できる」とか、「長さが自由」とか、「すごいニッチ層に重課金できる」とか、「(時間的な意味で)ロングテールで見られる」とか、「スマホの距離感」とか「双方向性」とか、色々メリットがあります。
しかし、配信側はともかく、コンテンツ制作側および視聴者側からすると、「マスメディアでは流せなそうな毒のあるコンテンツを、コンテンツ制作のプロが、その企画力/人脈力/撮影力/編集力を駆使して制作→配信する」というのが、ひとつの黄金パターンになり得るんじゃないかと思う次第です。
文春も、「センテンス・スプリング」というサイトでも作って、すごいスクープなんだけどなくなく雑誌に掲載しなかった記事を有料で販売したら、今だったら案外イケるかもしれません。
……と、ここまで書いて、オフィスのカフェスペースにて、日経MJのこんな見出しを発見。
「フジ、落ちたブランド」……おお、かつて最も毒が強く、もっとも実験精神に溢れていた栄光のフジテレビよ……この話、届くかな……
ついでに『アインシュタイン』復活させてください……