追記:松井ヘアークリニックが、完全オンライン診療に対応したとのこと。気になる方、気軽に相談してみるチャンスです!
モチベーションが下がらない内に、今から一気に書き上げて公開しちゃいますが、実はこのネタは、もう5年間、勇気を出せず書けなかったネタです。
だから……なにせ5年分のモヤモヤが詰まっているので、読みづらい部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。
昔から、薄毛に悩んでいました。髪も細いし、毛量も少ない。
「何にもしないで茶髪なんて羨ましい」とか「サラサラヘアでいい」と言ってくれる人もいましたが、それも程度問題で、頭皮が透けて見えたり、おでこが妙に広かったりしたら、何の長所にもなりません。
なので、常に髪の毛や髪型を気にする生活を送っておりました。
例えば駅のホームでは、いつも不自然な方を向いて立っています。通過する電車の風で髪型が変わったら一気にハゲっぽさが増すので。
同じ理由で、強風の日は、何かのゲームでもしてるのかな? ってくらい、あっち向いたりこっち向いたりしながら歩いたりしていました。
「髪が奇抜なら薄毛も目立たないだろう」と、銀髪やドレッドにしたこともありました。坊主にしたこともあります。帽子に凝ったこともあります。でも、頭の形のせいか、どれも似合わずに、すぐに止めてしまいました。
社会人一年目の年収は、駅前のキャッチで捕まったアデランスの育毛プログラムに消えていきました。毎月通って、酸素の入った水とかをかけられたり、頭皮マッサージを受けたり、空気圧で頭をマッサージする機械を買わされたり、そんな感じです。
一年くらいして、総額90万円くらい使ったころかな? スタッフの人に「素晴らしいですね! 一年ちゃんと通える人はなかなかいません! この調子で続けましょう!」と言われて、ようやくハッと目が覚め、その場で辞めました。
別に髪は減っても増えてもいませんでした。
20代のころは、それでもまだなんとか誤魔化せていたのですが、30代に入り、いよいよ本格的にヤバくなってきました。
以前より一層不自然な方向に立つようになった一方で、電気グルーブのメロン牧場での石野卓球の「禿げたら禿げっぱなしでいいじゃん!」という発言や、UnderWorldボーカルのカール・ハイドや伝説の編集長こばへん(小林弘人)さんの髪の毛の辺りをしげしげと眺めながら、「禿げていてもいいんだ」と、薄毛の人生を生きていく覚悟を決めつつありました。
そうして結婚して子どもも生まれたころ、ふと、育毛関係の仕事に携わることになったのです。
仕事のお相手は、松井ヘアークリニックという、当時開院したばかりの育毛専門クリニック。ここの松井先生が、僕の会社の社長の高校時代の同級生だった関係で、同院の認知拡大を手伝うことになったのです。
いろいろやりました。髪の毛に良い食べ物を紹介するイベントとか、iPhoneアプリの開発とか。ここから派生して、有名レシピブログ『あさこ食堂』が生まれたりもしました。
そんな中、「いちるさんもモニターで育毛やってみない?」と誘われたのです。
薬かぁ……自分でマーケティングのお手伝いをしておきながら、いざ育毛治療を目の前にすると、僕は悩みました。
確かに当時の僕の髪は、こんな感じでした。完全に薄毛です。
でも、薬で髪の毛を増やすというのは、なんというか、治療というより黒魔術っぽくないですか?
モニターなので治療費はかからないとはいえ、飲み薬ですよ? 副作用があったらどうするの? 一生飲み続けなくちゃいけないの? いろいろと心配しました。
同院の松井先生と、ずいぶん長いこと話し合いました。
松井先生はERなどの経験もある医師なので、さまざまな僕の疑問に、即答したり調べたりしながら、真摯に対応してくれました。
治療内容は、大まかに概要を説明すると、以下のようになります。
服用するのは、いわゆるAGAの薬「フィナステリド」と、リアップなどで使われる薬「ミノキシジル」です。
髪の毛はだいたい6ヶ月くらいのサイクルで生え変わります。しかし髪を育てる力の弱い人は、それよりも早く抜けてしまったり、あるいは生えてても細かったり伸びきらなかったりします。それが「薄毛」の原因です。だから、AGA系で髪の毛が早めに抜けるのを防ぎ、リアップ系で髪の毛の成長を促進するという2面作戦で、毛量を増やす。
副作用と一生飲み続け問題については、僕は専門家ではないので、詳しい話は松井ヘアークリニックのホームページを見たり、一度相談しに行ったりしていただければと思います。しかし延々と話し合った結果、僕はひとまず安心したし、以下のように考えることができるようになりました。
まず副作用。これは他の全ての薬と同じく、「医師の管理の元、細かくチェックを受けながら、用法を厳密に守って服用する」。毎月通院して診てもらい相談に乗ってもらうことで、安全に服用できるだろう、少しでも何かあったらすぐにやめよう、というスタンスでいくことにしました(まあ長時間かけて先生と話し合った結果なのですが)。
次に一生飲み続け問題。実はこれは、僕はアトピー性皮膚炎でいったん覚悟しているので、基本的には克服しています。
さらに髪の毛に関しては、生命保険と似たような考え方をしました。つまり「いつまで毛量を維持したいのかを決める」です。
僕の場合は、子どもが大きくなるまでは、それなりに毛量を確保しておきたいと思いました。妻は(幸いなことに)髪をそれほど気にしないタイプですが、思春期の子はわからないので。だから「子ども大きくなるまで」。そっから先は別に禿げ散らかってもいいや、そう考えることで、「一生飲み続けなくちゃいけないのか」という心配からは開放されました。
長くなりました。
この記事の本番は、ここからです。
通院と服用がはじまりました。
僕は検査結果では「薬が効く」はずの体質だったので、当初の予定通りの薬を、1日1錠、毎日飲み続けます。
最初はおっかなびっくりで、少しでも何かあったらすぐ先生に電話しようと身構えていたのですが、何ヶ月たっても、特に身体に異常は出ませんでした。
そして運命の日がやって来ました。
忘れもしません。ちょうど5ヶ月目を過ぎたばかりのころです。
(ああ、これだ。この文章を、この5年間ずっと書きたかった……)
ある日、お風呂で頭を洗っていたら、芝生を撫でているような「モサッ」という感触があったのです。
経験したことのない感覚。最初は整髪料のせいか何かだと思っていたのですが、いくら髪を洗って触りまくっても、モサッとしています。
鏡を見てみます。
頭皮が……見えません!
風呂を上がって髪を乾かして、また鏡を見てみます。
頭皮が……見えません!
頭皮が見えない。
髪の毛を触るとモサモサして芝生みたい。
あのときの感情を、どう言い表したらいいのでしょう?
ずっと身体の奥底で、一本の弦のようにピンと張られていた緊張感が、一気にゆるんだ感じ、かな。
この「モサッ」を経験して、逆に改めて、自分はこんなにも薄毛を気にしていたんだ、ということに気づきました。
朝から晩まで、何年も何年も心に刺さっていたトゲ、ほとんど無意識になっていた「薄毛を気にする心」、それが真夏の氷のように、一気に溶けてなくなっていったのです。
まるで奇跡が起きたような気持ちでした。
それから数ヶ月。友人に「いちるさん、髪型変えた? なんか昔と違うような……」と言われたり「最初会ったときから実は『薄毛の人だ』という認識でいたんだ」と告白されたり、いろいろありながらも、僕の髪の毛は、どんどんと「しっかり」していきました。
約10ヶ月後くらいには、こうなっていました。
最初と比べてみましょう。
並べてみると、全然違いますね……
松井ヘアークリニックでは毎日写真撮影をしていたので、それをお借りして、アニメgifにもしてみます。
ちょっとわかりにくいですが、増えていっているのがわかるんじゃないかと思います。
そして、今。
今は、自分的には満足できる毛量になったので、薬の服用量がだいぶ減っています。増やすんじゃなくて、維持モードですね。副作用もありません。
それと、髪の毛が増えたことで、逆に髪の毛のことに無頓着になりました。もうどんな髪型だったとしても「ヤバい」というくらい薄毛に見えることがないわけですから、もう結婚もしてるし特別に格好良くなる必要のない自分としては、まあまあであればいいのです。
たまに(記念写真を取るときなど)白髪染めをしますが、基本は自分の好きなように、ラフに整髪剤をつけるだけです。
最後に。
この記事を、もう仕事自体は終わって何年も経つのに、今になって書く覚悟ができたのは、ファッションアドバイザーとして今や飛ぶ鳥を落とす勢いのMBさんの、以下の記事がきっかけです。
ハゲ/薄毛に悩むMBが「湯シャン」を試してみた第1回:KnowerMag
湯シャン、僕も経験あるし、今でもしています。そして個人的経験だと、湯シャンは維持にはいいかもしれないけど、育毛はされません。
もしよかったら、試しに西洋医学の力を借りてみることも検討してみてください。個人輸入などで薬を服用しないで、病院で定期的に健診を受けながら治療すれば、現代医学の到達できるギリギリの範囲まで安全に育毛治療を行うことができます。
ベストなのは、もちろん何のストレスもなく「禿げたら禿げっぱなしでいいじゃん」と思えることです。松井先生も言うように、育毛は「髪の問題は心の問題。育毛の目的は、心配事をひとつ減らすこと」レベルのものです。
ただ、一生に一度くらい、「モサッ」を経験してみたくありませんか? 想像以上に良いものですよ。
松井ヘアークリニックであれば個人医院なので、気軽に相談だけもできます(たぶん同種の他クリニックもそうだと思いますが、行ってないのでわからない……ベルトコンベアみたいかもしれません)。
以上です。長文にお付き合いいただき誠にありがとうございました。あまり文章を推敲するとまた気合がしぼんでいくので、勇気を振り絞って、このまま公開します。文章がとっちらかった部分もあると思いますがご容赦ください。
この記事を、いつも雑誌やメルマガのファッションアドバイスで一方的にお世話になっているMBさんと、心配性な僕に辛抱強く付き合ってくれた松井ヘアークリニックの松井先生に捧げます。