昔、マクドナルドでバイトしていたことがあります。
すごく楽しかったです。休憩室は部室のように、いつも誰かがたむろっていて、学校では出会えない、いろんな年齢層の人たちと仲良くなれました。
僕はそこで、クルーノートという連絡帳のようなノートで勝手にコラムを連載したり、自作のmixテープを1000円で売りつけたりと、せっせと黒歴史作成にいそしんでいたわけですが、実は一番楽しみにしていたのは、古くなった(といっても20分前に作りました、程度なのですが)お店の商品を休憩中に食べること。
それまでほとんどマクドナルドに行ったことなかった僕は、そこであらゆる種類のハンバーガーやらポテトやらシェイクやらを、試しまくることができました。
そして、散々食べ尽くした結果、僕が一番美味しいと確信したのは、「ベーコンポテトパイ」でした。
ベーコンポテトパイは人気がなくて、ほとんど誰も注文しませんでしたが、いざ食べてみると、クリーミーで、ベーコンのアクセントが効いていて、パイ生地のサクサク感も絶妙で、最高に美味しかったのです。
僕はベーコンポテトパイの虜、ベーコンポテトパイマニアと化していました。いつもレジに立って、メニューを見て悩んでいる客を見つめながら、「あぁ、こいつもベーコンポテトパイを食べてみれば、マクドナルドへの印象がガラリと変わるというのになあ」と、残念がっていたものです。
ところが。
ベーコンポテトパイは、ある日、突然、終了の時を迎えます。
メニューから消えたのです。
そんな馬鹿な! 本社の人だったら、あの美味しさを知っているはずだ!
ベーコンポテトパイは経費削減のために消える運命にあるメニューではなく、(当時低迷していた)マクドナルドを救うために積極的にキャンペーンを展開する武器にするべきだ!
当時の窓口と思われるところにメールなどを出して抗議しましたが、いちパンピーの言うことなど、受け入れられるはずはありません。
僕はもう、二度と、あのベーコンポテトパイを食べることができないのだ……残念だ……と思いながら日々がすぎ、そしていつしか、僕自身も、ベーコンポテトパイのことを忘れていきました。
ところが、ですよ!
45周年だかなんだか詳細はわかりませんが、何やら今、ベーコンポテトパイが復活しているそうじゃないですか!!!
大岡山駅でポスターを見かけた瞬間、僕はもう予定に遅刻しているというのに、まっすぐマクドナルドに入って、ベーコンポテトパイを注文していました。
さっそく食べます。
ビジュアルは、昔と違いますね。45周年だということと、今風なお洒落感を演出しようとしたのでしょう。
まあ別にそれはどちらでもいいです。肝心なのは中身ですから。
「あぁ、これこれ!」という歓喜と、「ん? こんな味だったかな?」という疑問が、同量押し寄せてきます。
長い年月が経って、僕の味覚が変化したのでしょうか? ここしばらくは日本全体の食のレベルも、僕が食べるもののレベルも、指数関数的に伸びていったからなあ。
それとも……あのさ、当時とレシピ違うんじゃない? もしかしたら。
でも、ベーコンポテトパイの、あのベーコンポテトパイらしさは、微塵も失われていませんでした。
とうぜん完食。美味しかったです。
僕はベーコンポテトパイを食べながら、バイト時代の思い出も同時に食べていました。思い出補正がかかった食べ物って、なんでも超美味しいじゃないですか。
マクドナルドって、「思い出補正」をかけるのがとても上手なお店だと思うのです。ハンバーガー、フライドポテト、マックシェイク。どれも、子ども時代やバイト時代の思い出補正が、「美味しい!」だけじゃなく「懐かしい!」も呼び起こして、いろんな角度から満足感を与えてくれます。
でも食べ過ぎると身体に悪そうですけどね。僕もマクドナルドで何か食べたのは、下手すると5年ぶりくらいです。