夢がひとつ消えた。「子どもがカウンターに手が届く歳になったら、一緒に行こう」と思っていた立ち食い寿司屋が、3月18日をもって閉店するのだ。
その寿司屋は、五反田の高架下にある「都々井」。いつ見ても混んでる様子だったのに、寝耳に水とはこのこと。先週末の夜、なんとなくFacebookを眺めていて、たまたま気づいた。
慌てた。
「え!? もうすぐ都々井なくなるの!?」
「なくなる前にせめて、あと一度は行かなくちゃ」
「いつ行ける……?」
「予定がパンパンに詰まっている……」
「……今日、今日なら行ける。今からなら行ける!」
というわけで、夜10時半、そろそろ寝る準備をしようかという時間に、上着を引っ掛けて、五反田に向かった。
都々井。
いつもどおりの店がまえ。しかし入り口の脇に、こんな案内が張り出されていた。
閉店の噂は真実じゃった……告知と感謝
この度、大家(JR)からの突然の通告により、店舗契約が終了となり、今月、3月18日をもって閉店させていただく次第となりました。
現在もですが、今までも、いろいろなお客様方に来店していただき、感謝の思いしかありません。
大したこともできませんでしたが、この店で楽しそうに過ごしている姿を見たり、「美味しかったです」などと声をかけていただいたことが、なによりも最高の思い出でした。足繁く当店に通っていただいたお客様、いろいろ気をかけてくれた方々に対して本当に心苦しいのですが、この店を閉めることをお許しください。
皆様方のこれからのご多幸を、心よりお祈りいたします。世界で最高のお客様に来ていただいたことが、なによりも一番の自慢です。
本当に、本当にありがとうございました。店主 筒井誠
店員一同
店内は満席で、行列もできている。でも、JRからの通告で突然閉店、と書いてある。
なぜ閉店するのか? 耐震系だろうか? でも耐震工事が必要なら、店を休業して工事して、また戻ってくればいい。西葛西の立ち食いそば屋「やしま」みたいに。
なぜ閉店するのか? 不思議だ。どう考えても、既に人気の店にテコ入れして、さらなる名物になってもらう方がありがたいに決まってる。JR五反田駅側としても。
なぜ閉店するのか? なんか事情が重なったのかな。「耐震工事をしなくてはいけない」「腰痛が悪化した」「そろそろ定年の歳だ」「五反田駅としては女性受けする店を誘致したい」とか。
なぜ閉店するのか? 理由はわからないし、調べるのも大変そうだ。Buzzfeedあたりが取材してくれないかな。
さて、考えないで、体験することにしよう。
僕は、夕食後にも関わらず、なにかに取り憑かれたかのように、猛然と食べはじめた。
まずは熱燗。
お寿司の最初は、まぐろとえんがわ。
えんがわのモチモチなこと!
真アジとスルメイカ。
アジはちょっと苦手な魚臭があった。スルメイカはかたすぎず柔らかすぎず最高。
白子とあん肝。
白子というのは、それが何かということを考えない限りは、うっとりするような食感だと思う。
うに先輩。
パイセンに対しては、「食べる」というより「食べさせていただく」という方が正しい。美味い。
かにみそ、ブリ。
かにみそのコク、ブリの歯ごたえ。美味い。
いわしと、活〆ほうぼう。
ホウボウってはじめて食べたけど、クセはないのに旨味はあって美味しいのね。覚えておこう。
とり貝と鯛。
とり貝も肉厚で鯛は言うに及ばず。
鯛、えんがわ、ボタンエビ
締めは、マイ・フェイバリットのえんがわと鯛にボタンエビを添えて。
見てくださいえんがわの肉厚なこと!
僕はぼっちだったので、会話で箸が止まることもなく、すごい速さで次々と平らげた。これ全部食べるのに30〜40分くらいだったかしら?
僕の右隣では、編集者が作家をあらゆる方向から褒めちぎりまくり、左隣では、サラリーマンが、セクハラギリギリの恋愛トークに花を咲かせていた。
さすがにお腹いっぱいになりすぎたので、一通り食べたあと、長居せず店を出た。支払い時に「美味しかったです」と言って。
さて……
子どもがカウンターに手が届くようになったら、どこのお寿司屋に行けばいいですかね?
もしどこかオススメがあったら教えてください。
※ 「閉店後は一日でも早く店を構えたい。できれば同じ五反田で1階の店がいい。急いで物件を探している」(品川経済新聞)そうです! thx @senna_dsさん
しかしこの記事を読むと、よけいにJR側に事情を聞きたくなる……なぜ……