しいたけ占いに「昔観て感動した映画とか、もう一度観てください」と書いてあったので、週末は『バベットの晩餐会』を鑑賞しました。
とても面白かった記憶があったのですが、内容はさっぱり忘れていたんですよね。
なので、最初から最後まで新鮮な気持ちで観ることができました。
期待に違わず、面白かったです。
リアリティ重視というよりは、どちらかというと、近世のおとぎ話といった感じ。
舞台は海辺の、灰色で質素な貧しい村。
ほんとドラクエ1の村みたいに、家がポツンポツンとしかありません。
主人公は2人の年老いた姉妹。登場人物もだいたい老人。
これ以上はできないというくらい地味な絵で、はじまります。
姉妹には、貧しいにもかかわらず、数奇な縁で雇うことになった、メイドがいます。
このメイドが「バベット」。
村は、キリスト教的な禁欲さと、田舎町の寂しさと、老人の気難しさで、鬱々としています。
そんな中、バベットは、老姉妹や、周辺に住む老人たちの世話を、黙々とこなします。
(この「黙々とこなす」様子が、中近世の北欧田舎の細かい生活感を垣間見るようで、なかなか楽しいのです。海辺で魚をねぎったり、石みたいなパンをビールに漬けたり、ベーコンが腐ってたと文句を言ったり)。
そんな質素で単調な生活の中、ある日、大事件が起きます。
バベットが、宝くじに当たったのです。
バベットには甥がいて、彼が、定期的に宝くじを買っていてくれたのです。
それが、大当たり。
老姉妹は、「これでバベットは村から去ってしまう」と覚悟します。これからは、バベットがしてくれていたような日常の細々とした作業を、全部自分たちでやっていかなくてはいけない。果たしてできるかしら……
しかし、バベットが口にしたのは、
「フランス式の晩餐会を開かせてください」
でした。
わけがわからないまま、老姉妹は快諾します。
許可を得たバベットは、早速準備に取り掛かります。
すると……
灰色の小さな漁村に、突如として運び込まれる、
生きたウミガメ。
牛の頭。
カゴに積まれたウズラ。
大量のワイン。
住民は「サバトが開かれる!」と恐怖します。
観客からすると笑っちゃいますが、まあ普段干した魚のスープくらいしか食べてない人たちのところに、いきなり生々しい食材が大量に持ち込まれたら、それは確かに驚くだろうし、罪深き邪悪な饗宴を想起しちゃいますよね。
住民たちは、互いに決意し合います。
「決して食べ物を『味わって』はならない」と。
素朴な人たちが、必死で知恵を巡らせた結果の、対抗策。素朴すぎて微笑ましくなります……
そして!
晩餐会がはじまります!
これまでの地味に地味を重ねた地味が、全部裏返るかのような、その村で考えられうる限りもっとも贅沢な晩餐会が!
この転換が、最高に気持ちいいんですよね。
かつ、出てくるご飯やワインが、ことごとく本当に美味しそう。
見ても愉しめる料理です。
また、この晩餐会の中で、バベットの正体も明かされます。
どうしてバベットはこんな料理を作れるのか……?
これも気持ち良いのです。北斗の拳的な、
「え!? お前そんなに強かったの!?」
の快感があります。
最初は緊張感に漲っていた村民たちも、最高に上質な食事が進むにつれ、心がほぐれ、暖かくなり、部屋に優しさが満ち溢れます。
最後の最後までいろんなどんでん返しが待っているのですが、単なるネタバレになるので、控えときます。
長くない映画なので、ぜひ観てみてください。
おとぎ話みたいな「めでたしめでたし」で、とても優しい気持ちになれます。
最後にひとつだけ。
バベットの名言を貼っておきます。
貧しい漁村でメイドをしているバベットですが、芸術家としての彼女は、決して貧しくはないのです。
モノやコトや評価が重視されがちな現代にあって、ハッとさせられる「己の軸についての名言」だと思いました。