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奥さんに教えてもらった本『絶望名言』が、ウケるくらい名著だったので、紹介します。
この本は、NHKラジオ深夜便の人気コーナーを書籍化したものです。
語り手は頭木弘樹さんと川野一宇さん。古今東西の文豪や芸術家の「絶望」についての名言を、語り手の経験や背景情報と重ねながら、紹介していきます。
この「語り手の経験や背景情報と重ねながら」の部分が、素晴らしいのです。
単に歴史上の人物の名言を紹介されるだけだと、「深いな……」「名文だな……」「大変だったんだな……」で終わってしまいがちです(確かに深い名言なのですが)。
そこを、頭木さんが「私も病気をしたときに、同じような気持ちになりまして……」「この作者はこのとき、実はこういう状況でして……」と、グッと具体的に解説していくんですよね。
そのおかげで、世界の文豪や芸術家すらも、身近に感じてしまう、そんな不思議な感覚があります。
実はこの本、妻に借りてから読みはじめるまで、結構間がありました。
「ネガティブなことを聞くとネガティブになっちゃうんじゃないか? それは嫌だな」と思ってまして。
でも、全然そんなことありませんでした。
決してネガティブに引き込まれてしまうような本ではありません。
また、「こんな酷い目にあってる人がいる。自分なんてまだマシだ」と、ネガティブに下を見て安心するみたいな本じゃありません。
希望の光を見せてくれたり、気持ちをアゲてくれたり、ポジティブにしようとしてくる本でもありません。
そうではなくて、人生の裏の部分、夜の部分、弱い部分、悲しい部分、カオスの部分ってあるよね、と。
それを認め肯定することで、時代も場所も超えて人々が互いに優しく寄り添い合う。
そんな本でした。
たとえば、カフカの名言として、以下の言葉が紹介されているのですが、
将来に向かって歩くことは、ぼくにはできません。
将来にむかってつまづくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
この、笑っちゃうほど絶望的な名言を、頭木さんの体験(入院)やカフカの当時の様子(なんと、特に外から見ると問題はない!)を交えながら、しみじみと紹介していく、そんな本です。
なにより、コンセプトが明確でユニークですよね。「絶望名言」って聞いただけで、ある程度内容を想像できちゃいますから。
素晴らしい企画だと思います。
興味があればぜひお読みください。ラジオの書き起こしなので、話し言葉です。スラスラとすぐ読めちゃいますよ。
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そういえばジョゼフ・キャンベルの本も、結局一番刺さったのは、NHKスペシャルのインタビューの書き起こし『神話の力』だったな……
僕は対談モノが好きなのかもしれません。もし対談モノの良書があったら教えてくださいー。