発売当初から話題だった本『異文化理解力』を、ようやっと読んだ。
この本は、それぞれの国や文化で、考え方はこう違う。だからA国人にとっては丁寧な振る舞いが、B国人から見ると逆に無礼になる、ということを、数多くの事例とインタビューで取りまとめた本だ。
毎ページ、発見がある。
たとえば、同じ欧米でも、説得の方法としては、アメリカとドイツでは全く違う。
よくプレゼンの仕方を教えるとき、「まず結論を書いて、次にその具体例を書いて……」という方法を教わるが、これはアメリカ的で、ドイツ、あとフランスやスペインなどではNG。これらの国では「まず諸条件を述べて、結論に至るまでのデータや考察を述べて、それらから導き出される原理を述べる」。だからアメリカ人がドイツでプレゼンすると、最初に結論を述べた直後にプレゼンが遮られ、「どうやってその結論に至った?」と質問されまくり、先に進まない。
とか。
フランス人が中国人に「私のプレゼンの間に、ちょいちょい割り込んで、私の主張を補強してね」とお願いしても、中国だと他人、しかもその場を取り仕切る統括者の話に割って入るのは失礼に当たるため、できない。
とか。
稟議って実は日本特有のシステムで、他の国にはほとんどない。これは合意思考が極端にまで触れた仕組みで、これによってあらゆる課題は、主要な人全員が目を通し、責任を分散させる効果がある。
とか。
この本は、大雑把に「国によってこういう考え方があるよ」と述べた本ではない。
大項目でも「コミュニケーション」「評価の仕方」「説得の仕方」「リードの仕方」「決断の重み」「信頼のあり方」「見解の相違に対するスタンス」「スケジュールに関するスタンス」と8つの項目に分けて、20ヶ国くらいをマッピングしていく。たとえば「評価の仕方」についてはこんな感じだ。
この図の左に位置する国、たとえばオランダでは、意見に対して真正面から批判されると、感謝の念を感じ、信頼が増し、友情すら芽生えるらしい。すごいな。
もちろん、人にはそれぞれ個性があるし、育ちや教育環境の違いもあるのは重々承知。
ただ、「文化ごと、国ごとの考え方の癖」に一定の傾向があるのは確か。グローバルにさまざまな文化圏の人と仕事をする機会がある人にとっては、必読書だと思う。
その上で。
僕はこの本を、「国同士の違い」だけではなく、「僕と僕を取り巻く社会の違い」の本としても読めた。
誰しもそうだと思うが、僕も「自分って世間とズレているのかな?」とか「自分って変わってるのかな?」と悩んだり、コミュニケーションに齟齬が生じて余計なトラブルを生んだことがある。
この感覚は、漠然とした「変わってる」とか「何かおかしい」といったものだった。
しかし、この本の8つの評価軸に自分をプロットしてみると、「僕は、ある点では日本人的だけど、ある点では日本人的ではない」といったことが可視化される。そして、多くの発見がある。
以下に、プロットした結果の表を載せる。
各項目に、日本と、あと、参考までにアメリカと中国の位置を示している。そして赤字で、僕が「自分はこの辺かな?」という位置を示している。
もちろん自分のマッピングについては感覚的にやっただけなので正確性は皆無だが、僕にはかなり納得感があった。
僕は「評価の仕方」「スケジュールに関するスタンス」についてはかなり日本的だが、一方で、
● 「コミュニケーション」については、日本平均よりもちょっとローコンテクスト。空気を読めるけどあまり気にしたくない
● 「リーダシップ」については、日本平均よりも平等主義的。別にボスのボスに直接話す時があったっていい
● 「決断のプロセスや取り扱い方」については、日本平均に比べると合意を重視しない。任せた人に任せる
● 「信頼」については、日本平均よりドライ。仕事については仕事で会話したい
● 「見解の相違」については、ちょっとだけど、日本の平均に比べると対立して議論しても構わないと思っている
で、これは僕の実感にも結構近い。
「変わってる」とか「ちょっとおかしくない?」とか言われる部分は、概ね上に上げた項目に触れたときだったように記憶している。
かなり面白い、と思った。
(あと、さまざまな怒られを思い出して胃が痛い……w)
今後仕事していく上で、どの部分は意識して調整すれば良いのかが見えた気がする。
自分を押し殺して相手に合わせるという意味ではない。「この部分はズレやすいから、キチンと言葉で自分の考えを伝えよう」と襟を正すことができる、という意味だ。
また、俯瞰的な視点も得た気がする。
自分が違和感を感じる状況が、日本だったら日本の特徴に過ぎないのであって、世界における絶対的な常識ではないのだとしたら、それほど深刻になる必要はない。
このマップを活用して、自分に合った国を探して移住してもいいのかもしれない。
いろんな気づきがあってオススメだ。
気になったらパラ読みでも手に取ってみることをオススメします。
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