Garden House Saraが営業を終了するという報を聞いた。
とても寂しい。
Saraは、那須のペンションだ。
居心地がよく、ウチの家族は2013年から毎年お世話になっていた。
11年前、我が家は「田舎」を探していた。
僕も妻も実家が都内近郊にあるので、帰省だけでは子どもたちに「夏休みの田舎暮らし」を体験させてあげられなかったからだ。
その年の夏は、あちこち行ってみた。
そして結局、毎年夏休みに那須へ行くことにした。
(ちなみに全部、妻の発案である。)
那須を選ぶ決定打となったのが、Saraだ。
Saraは、居心地のクオリティが最高だった。
まず、手入れが行き届いて、清潔だった。
カビひとつ、ホコリひとつない。ほのかに良い香りが漂い、薄くカフェミュージックが流れている。
ホテルや宿の欠点がイチイチ気になる僕が、一切の不快を感じなかった。
宿の人の距離感も、ホッとできた。
いつも準備していて、必要な時はサッと手助けしてくれる(風呂のタオルが欲しいとき、とか)。
さっぱりしていて暖かいコミュニケーションがある。地元の人ならではの那須情報を教えてくれる。
細かいルールはなく、自由にさせてくれる。子どもたちもすっかり懐いていた。はしゃぎすぎて壁に穴を開けてしまったときも、怒らず対応してくれた(すみませんでした……)。
朝食も美味しかった。
ワンプレートで、野菜たっぷりで健康的。僕は「玄米ラテ」が好きで、いつも何杯もおかわりしていた。
長期に泊まるときには、気を利かせてくれて毎朝変化をつけたメニューにしてくれた。
くつろげるのも良かった。
ラウンジのソファでカードゲームをした。たくさんマンガが置いてあった。マッサージチェアもあった。
子どもたちは、小さいときは広々としたラウンジで遊ぶ夕方が、大きくなってからは畳の部屋で転がってマンガを読む夜が、ことのほかお気に入りだった。
ところどころにちょっとした工夫があった。
庭では山羊なども買っていて、葉っぱを食べさせたりお散歩させたりする体験ができた。お風呂はバブルが出た。サンドブラストでオリジナルのコップやお皿を作る体験教室も開催していた。
宿のマスターが作ったテオヤンセン風の歩く自転車は、TikTokで70万再生くらいのバズを生んだ。
お値段もお財布に優しかった。
そんなことが合わさって、Saraはウチの家族の常宿になった。
毎年、スケジュールをやりくりして、2泊〜4泊、那須に行った。コロナ禍でも行った。
Saraを中心にして、那須のいろんなところを巡った。
遊ぶのに最適な川も見つけたし、宝石堀りアトラクションはいつも大盛り上がりだったし、動物園も美術館も堪能した。滝はパワースポットばりの清涼さに満ちていたし、温泉も気持ちよかった。毎年のように洒落たスポットが爆誕していた。パンも蕎麦もガレットもハンバーガーもアイスクリームもパンケーキも美味しかった。
ただ、どちらかというと、我が家の主目的は「那須に行く」というより「Saraに行く」だった。
ほぼ親戚の家に行くくらいの感覚で、夏休みに、都心よりちょっと涼しい、自然がたっぷりある田舎に行く。勝手知ったる宿でくつろぐ。パン屋やセブンイレブンで惣菜を買い込んでSaraで食べる夜はちょっとした祭りのよう。そのついでに那須のあちこちを巡って遊ぶ、そんな感じだった。
だから、Saraがなくなるのは、とても寂しくはある。
寂しくはあるのだが、一方で、Saraを営むことを考えると、大変だろうな、とも思う。
Saraは豪華絢爛なところではなく、隅々まで手入れが行き届いたところだ。資本の力で非日常を作るのではなく、手作業のクオリティでリラックスさせてくれるところだ。
Saraは、夫婦2人で営んでいる。2人でこのクオリティを維持するのは、どれだけ大変だろう。僕なら1ヶ月も続けられないかもしれない。それを思うと、無邪気に「寂しい」とは言えない。
夫婦でペンションをやるというのは、きっと思い切った決断だったのだろう。そこには大きな夢があったのだろう。夢がないと、あのクオリティを維持するモチベーションを保てない。
夢は100%の形で、このたび達成された。そういうことなのだと思う。
物事は、良きことも悪きことも、全ては過ぎ去っていく。
あとには思い出と風だけが残る。そして次の道を歩いていく。
Garden House Sara、お疲れ様でした。
今後はサンドブラスト体験のお店に変わるとのこと。
これからも楽しみにしています。