映画『かがみの孤城』を観てきました。
とても良かったです。学校関係者、子育て中の親、10代、周囲と馴染めず悩んでいる全員が観た方がいい傑作だと思いました。
あらすじとかは他でも読めるので無視して、ここでは、僕が覚えておきたいことをメモします。
4つです。
● 生徒のトラブルについて、先生が取りがちな間違いを、明確に「間違い」と指摘した重要さ
● 視点を変えればアッという間に解決することもあるということ
● 悩みは個別だから、安易にパターンで判断してはいけないこと
● 馴染めない辛さ
● 生徒のトラブルについて、先生が取りがちな間違いを、明確に「間違い」と指摘した重要さ
僕的に最重要だと思ったのは、先生が、いじめを「2人の生徒にすれ違いがあった」「本人同士で腹を割って話せば解決する」程度の問題に矮小化しようとしたこと。そして、一番やってはいけない「本人同士を会わせよう」としたこと。
これ、本当に今でも多いんです。学校でもこうやって解決しようとして、よけい状況が悪化することもあるし、会社どの大人社会でも、こうやって表面上解決の方向に向かったように見せることが多い。
これをすると、結局、弱者が全部我慢して消え入ってしまいます。単純ないじめでそうなるんじゃなくて、学校とか家庭とか会社が、組織だって弱者が敗北する枠組みを補強しているところが、醜悪です。
これを「そのやり方はない」と、ビシッと物語の中ででも言い切ったのは、とても重要なことだと思います。
学校の先生はこの一連のシーンだけでも全部見たほうがいいんじゃないかな。
● 視点を変えればアッという間に解決することもあるということ
次に重要だと思ったシーンが、学校内の誰と誰が仲がいいとか仲間外れにされているとかを、渦中にいる本人に「バカみたい。たかが学校のことなのに」と言い切らせたこと。
このように、視点を変えてしまえば解決することも、たくさんあります。外野が「お前、視点を変えろよ」というのは悪手ですが(1つ前に書いた醜悪な状況を生み出す元になる)、本人が、ふとした拍子に視点を変えて、問題の渦中から自分を救い出してあげることができるのは、とても大切なこと。
そう、たいていのことは「たかが○○のことなのに、バカみたい」で解決できちゃいます。重要な武器として覚えておきたいなと思いました。
● 悩みは個別だから、安易にパターンで判断してはいけないこと
悩みを持つ子は、その悩みが言い出せないこと多いです。さらに言うと、そもそも「何にどう悩んでいるか」をちゃんと意識していない、言語化できていないことも多い。
明らかにしちゃうと世界が崩れてしまうような恐ろしいことな場合も多い。
だから、何にせよ、安易に判断してはいけないのだと思います。
世界は物事をパターン化して分類し、わかりやすくする方向に向かっていますが、自分の身の回りで起きている問題が、パターンの中で解決できるものなのか、個別の事情を丁寧に解きほぐしていかなけやいけない獣道系のものなのかは、慎重に判断する必要があります。
蛇足ですが、村上春樹の小説では、よく主人公が「わからない」と言います。一時期それは茶化されていたのですが、今改めて思い返してみると、それがいかに誠実な返事だったかが、よくわかります。
● 馴染めない辛さ
僕もそうでしたが、学校に馴染めませんでした。
1学期は頑張るのですが、2学期になると、気がついたら完全に孤立している。あとは次の年のクラス替えを待つだけの日々。ずっとそういう学生生活でした。
なぜ僕には気楽な友だちができないのか、楽しい仲間ができないのか、わかりませんでした。
馴染めないと、クラスでたった1人ポツンとしているので、とても恥ずかしかったです。
昔は不登校なんてありえないし多様な進路もなかったので、せいぜいたまにズル休みするくらいしか、自分を保つ方法がありませんでした。当時の自分はなんて頑張ったんだろう、なんて偉かったんだろうと、感心することしきりです。
そんな学生時代だったせいか、今でも人に連絡を取るのが苦手です。
「僕から急に連絡きても相手も困るだろうし、僕だって相手を楽しませられるかわからないな」と考えてしまいます。
とても大事に思っている友人にすらそうで、そのせいで友情が消え入ってしまうんじゃないかと怖くなるけど、さりとて連絡するのも怖い、みたいな……それこそバカみたいですが笑。
誰しも「僕はあの人のこと友だちだと思っているけど、あの人は僕のことどう思っているのか、本当のところはわからないな」と考えているものだと思うのですが、僕の場合は、それが過剰に出ているのと、学生時代に感じた「恥ずかしい」という気持ちがその考えと結びついているのでしょう。
『かがみの孤城』は、「馴染めない」という辛さに対して、丁寧に胸の内を書き、どう向き合っていけばいいのかを丁寧に書いた良作だと思いました。アニメ映画としても、破綻がや違和感がなく、スルリと入ってくる進行で、見事でした。
小説も買ってあるので、読んでみようと思います。
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