2ヶ月半で読んだ289冊のうちのベスト5冊を紹介する第4弾は、「ブログ誕生 - 総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア -」(第1弾、第2弾、第3弾)。
ブログ誕生 ―総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア
スコット・ローゼンバーグ (著), 井口 耕二 (翻訳)
この本はムチャクチャに面白い。
しかし、何がどう面白いのかを説明するのが難しい。
難しいので、この本に対する最近の僕の行動を書いてみる。
まず、毎日持ち歩いている。人にオススメするためだ。打ち合わせの場などでで、必ずこの本のどこか1〜2箇所を紹介する。
次に、既に3度読んでいる。3度目はこのレビューを書くために開いたのだが、全く飽きずに一気に読み切ってしまった。
最後に、15人程に数ページを印刷して渡している。そして「他の部分も最高だからぜひ買って!」と熱烈に販促している。
最高にガチでマジでヤバい本なのだが、万人向けの本ではない。
本書は、ここ15年ほどの米国のブログの状況について書かれた、業界ドキュメントだからだ。全然この業界と関係ない人、たとえばウチの母などにはオススメできない。
ただ、ネットの業界にいるのであれば、しかもサービスやコンテンツの企画、またはマーケティング関連やソーシャル関連の業界にいるのであれば、この本は死ぬほど面白くて死ぬほどためになる。
この1冊に全て書いてある。これだけ読めば、あなたの抱えているものがブログに関係しているかどうかに関わらず、何が大切で何がそうではないのか、どこが勘どころなのか、どっちの道が正しいのか、本質は何なのかは、ほとんど全てわかる。
著者はスコット・ローゼンバーグという、古参のオンラインマガジン「salon.com」の創設者。ブログの黎明期(1995年くらい?)からTwitterやTumblrやFacebookなどの台頭(2010年くらい?)に至るまでを、できるだけ多角的に分析している。
目次を見るのが判りやすいだろう。章の後ろについているのは、その章の主な登場人物だ。
第一部 パイオニア
1.すべてをさらけ出す(ジャスティン・ホール)
2.個人の声をそのまま発信(デイブ・ワイナー)
3.リンクで人物がわかる(ジョーン・バーガー、フィルター)第二部 拡大
4.ブロガー・カタパルト(エヴァン・ウィリアムズ、メグ・ホーリハン)
5.政治系ブログの台頭(ジョッシュ・マーシャル)
6.ブログで稼ぐ(ロバート・スコーブル、ニック・デントン、ジェイソン・カラカニス)
7.爆発的に拡大するブロゴスフィア(BoingBoing)
8.リアルであることの危険(ヘザー・アームストロング)第三部 ブログがもたらしたもの
9.ジャーナリスト対ブロガー
10.誰もがブログを持つ時代
11.未来につながるかけら
エピローグ 皮肉のたそがれ
わかる人が読めば、ここに出てくる名前を見るだけで涎が出ると思う。購入はこちらからどうぞ。
個人的には、グランズウェルやウィキノミクスやフリーよりも、より深いところで響いた本だった。
この「ブログ誕生」には、ビジネス以外のことも豊富に書かれているからだ。ネットビジネスに情熱を注ぐ人々を描いた本ではなく、ネットに情熱を注ぐ人々を描いた本だからだ。僕はネットが好きでこの業界に入った。Bloggerの共同創業者メグ・ホーリハンが「この業界にはドットコムの人とウェブの人という2種類の人種がいる(P137)」と言っているが、その区分で言うと僕はウェブの人だからだ。
あと、僕が編集長を務める「ギズモード・ジャパン」の元サイト「Gizmodo」が、どういう経緯で、どういう意図をもって、どういうポリシーで立ち上がり運営されているのかが細かく書かれていたのも、個人的には感動的に興味深かった。目から鱗が落ちまくる、新鮮な視点の宝石箱だった。
前述した「印刷して渡した」のはこの部分で、渡した相手はギズモードのライターや編集者の方々だ。
この本は、恐らくあまり売れていないのだと思う。ネットを探しても、ほとんど書評を見かけない。
でも名著なので、もし興味を持ってくれた人がいたら、ぜひ手に取って、興味を持った章だけでも読んでみてください。たぶん想像以上に、自分の中の色んな部分が触発されると思いますから。